
もくじ
1. ごあいさつ
・胸腺腫
・精巣腫瘍
3.最後に
ごあいさつ

こんにちは。
オンラインどうぶつ病院Talkvets獣医師の前田です。
お盆中いかがお過ごしでしょうか?
本日は、ちょっと怖い腫瘍の話を書いてみたいと思います。
今日のお話は主にわんちゃんの病気についてなのです。
病院で診察していると年に何件か巨大な腫瘍を発見することがあります。
そこまで成長する前に気付きそうに思えるのですが、共通して言えることがあまり症状が出ないことも多いので意外と気づかないということです。
意外と挙動が穏やかな腫瘍が多いのですが、発見された時に巨大になっているが故に手術が…ということもあるので、早期発見が大切です。
実は、手術で取り切ってしまえば予後がいいということにもなりやすい腫瘍でもあります。
そんな腫瘍を3つご紹介したいと思います。
獣医さんが解説する静かに巨大化する怖い腫瘍3選

肝細胞がん
わんちゃんの肝臓の腫瘍といったらこの腫瘍と言ってもいいぐらい有名な腫瘍です。
そして気づかぬうちに巨大化している代表的な腫瘍でもあります。
お年をとってくると、少し肝数値が高めということもよくあるので、特に症状がないと血液検査だけして経過観察ということもあると思います。
その中には、実はこの肝細胞がんができていて…というケースがあります。
全く症状はないことが多いですが、気づくきっかけになることが多いのが体重の減少です。
シニアで肝数値高め、同じ量を食べているのに最近痩せてきた?というパターンで引っかかって見つかることも多いです。
また、腫瘍のある場所も重要で、左側だと手術しやすいのですが胆管や血管などの走行の問題で右側だと手術困難なこともあります。
あとは、手術さえ乗り切ると術後の平均生存期間が1460日以上というデータがあるぐらい予後が良い腫瘍なのですが、術中に亡くなってしまったり、術後状態が悪く周術期に亡くなるケースもあります。(他の腫瘍の手術よりも体感的に多いです。)
胸腺腫
続いては、胸部(胸腔)にできる巨大化する腫瘍をご紹介したいと思います。
胸腺という免疫系の臓器が腫瘍化したもので、比較的良性の挙動をするものと悪性の挙動をするものがあります。
まれな腫瘍とは書いてあるものの、私が獣医師をしていて5年に1~2件ぐらいのペースでは遭遇しているので、診たことがないというレベルの発生率ではないという印象です。
免疫系の組織が原因なので免疫異常を起こすことがあり、重症筋無力症の症状のひとつである巨大食道症を起こす腫瘍として有名です。
手術自体が大変なことが多いですが、胸腺の被膜ごと完全切除できるケースも割と多く、切除できれば予後が良い腫瘍です。
精巣腫瘍
精巣腫瘍自体には3つ種類があるのですが、その中でもセルトリ細胞腫という腫瘍が巨大化しやすいです。
とくに、中型〜大型犬で毛が長いわんちゃんだと、毛に隠れているので気づいたらかなり巨大化していたというケースも遭遇します。
あとは、潜在精巣といって本来外側に降りてきているはずの精巣がお腹の中に残ってしまい、腫瘍化しているケースもあって、見つかったときにはかなり巨大化していることもあります。
特に、この腫瘍はほぼ症状がないので触る機会がないと気づかないということも結構多いです。
ただし、転移率は10%前後と低いので巨大化していても切除してしまえば予後は良いことが多いです。
最後に
巨大腫瘍は見つかったときの衝撃が大きいです。
大きさと年齢で手術などを諦めるケースも多いですが、大きさの割に意外と予後がいいこともあるので諦めずに治療を相談してみるということも選択肢に入れておいてくださいね。
それでは、また次回のコラムでお会いしましょう!

執筆者
2010年 北里大学獣医学部卒業
大阪、東北の動物病院を経て、
2015年~2016年 北里大学附属小動物医療センター研修医
2016年~2024年 大阪市内の動物病院の開業業務にたずさわり、院長として勤務
2024年 オンラインどうぶつ病院Talkvets立ち上げ