
もくじ
1. ごあいさつ
・血管肉腫
・骨肉腫
3.最後に
ごあいさつ

こんにちは。
オンラインどうぶつ病院Talkvets獣医師の前田です。
人の死因で最も多いのが腫瘍です。
これはわんちゃんなどでも同じです。
特にわんちゃん、ねこちゃんはライフサイクルが早い動物なので、人の感覚で治療していると、こんなに手術も抗がん剤も頑張ってもらったのに、これくらいしか余命を取れなかった…と思うことは多々あります。
本日は、そんな腫瘍の中で発生が多く、そして手術など既存の治療をしてもなかなか余命を確保できない嫌な腫瘍をお話ししたいと思います。
獣医さんが解説する現行の治療が奏功しづらい嫌な腫瘍3選

血管肉腫
血管肉腫は血管内皮細胞という細胞が腫瘍化した腫瘍です。
脾臓での発生が1番多いですが、その他に肝臓や心臓、皮下にも発生します。
血管に関連した腫瘍であり、さらに脆いという性質があるため脾臓や肝臓に発生すると、腫瘍が破れて大出血をして虚脱状態に陥ることもある怖い腫瘍です。
また、進行性の強い予後の悪い腫瘍としても知られていて、脾臓の血管肉腫を手術して他の治療をしなかった場合は約1〜3ヶ月、手術後に抗がん剤をおこなったとしても約5〜6ヶ月程度、1年生存率は10%未満と言われています。
骨肉腫
大型犬の足にできる腫瘍として有名な腫瘍です。
75%は四肢で発生し、好発犬種はG .レトリバー、アイリッシュ・セッター、ジャーマン・シェパードなどです。
骨から発生するので疼痛を伴うことも特徴で、疼痛管理の上でも四肢に発生した場合、断脚が選択されます。
ただし、断脚だけでは90%以上で転移し、生存中央値が4〜5ヶ月程度です。
生存期間を延ばすために、断脚のあとに抗がん剤を入れますがそれでも生存期間中央値は8〜12ヶ月でなかなか根治が難しい腫瘍です。
メラノーマ
メラニン色素をつくる細胞が腫瘍化した腫瘍で、黒色の見た目をしていることが特徴です。(黒色以外の場合もあります)
約80%が口の中や唇に発生します。
口にできると、下顎であれば切除できても上顎など場所によっては摘出が難しいことがあります。
また、下顎などに発生していて下顎切除で完全に口の中の病変を切除できて、手術の時には明らかな転移所見がなかったとしても、術後に転移病変が出てくることが非常に多い腫瘍です。
リンパ節など見た目は問題なくとも40%で転移していると言われています。
病変が2cmを超えてくると、中央生存期間は約4ヶ月程度です。
最後に
他にも治療がなかなかうまく行かない腫瘍は多々あるのですが、この3つの腫瘍は比較的発生が多くて、獣医さんとしても心がズンッと重くなる腫瘍です。
なかなか、現行の手術や抗がん剤だけだと余命が確保できない腫瘍でもあります。
そんな中で新しい治療方法も日々研究されているので明日はその新しい治療について触れてみたいと思います。
それでは、また次回のコラムでお会いしましょう!

執筆者
2010年 北里大学獣医学部卒業
大阪、東北の動物病院を経て、
2015年~2016年 北里大学附属小動物医療センター研修医
2016年~2024年 大阪市内の動物病院の開業業務にたずさわり、院長として勤務
2024年 オンラインどうぶつ病院Talkvets立ち上げ