
もくじ
1. ごあいさつ
3.最後に
ごあいさつ

こんにちは。
オンラインどうぶつ病院Talkvets獣医師の前田です。
今年の夏も暑いですね…
暑い夏は特に、エリザベスカラーをすると蒸れやすくてなかなかカラーをつけてもらいずらかったりします。
ただ、眼に関しては夏冬関係なく治りに影響することが多々あります。
今日はそういう話も含め眼の話をしたいと思います。
獣医さんが解説する眼の傷が治らない!そんなときは?

眼の傷=角膜潰瘍
眼が開かなくなったというとき、原因として1番多いのは傷です。
眼の傷は医療用語で言うと角膜潰瘍といいます。
眼に傷がつくと、皮膚の傷とは少し違って細菌が関与して角膜が傷の周囲を含め欠損します。
そのまま悪化すると、角膜がさらに侵食されて欠損がどんどん深くなり、角膜の実質がなくなってデスメ膜瘤といって、眼の中と角膜の間の膜が出てきます。
それでも進行が止まらないと、最終的に角膜に穴があき角膜穿孔という状態になります。
角膜はわんちゃんで0.7mm、ねこちゃんで0.5mm程度しかないとても薄い組織なのでちょっとした油断で穿孔してしまいます。
角膜潰瘍は油断できない病気なのです。
よくあるTIP
ちょっとした角膜潰瘍は、順調であれば1週間あればきれいに治ります。(深い角膜潰瘍は時間がかかります)
ただ、実はなかなか傷が治らないというケースがとても多いです。
難治性の角膜潰瘍という病態もあるのですが、そういったもの以外にも治りが遅くなる要素があります。
本当に単純なことなので治りが遅い場合は一度振り返って考えてみてもらうといいと思います。
まず、一つ目は
圧倒的にエリザベスカラーしているかどうかです。
エリザベスカラーをしていないということ意外と多いです。
眼の疾患では眼を触るという行為を制御しないと良くなりません。
なので、エリザベスカラーは必須です。
二つ目は、
エリザベスカラーが機能しているかどうかです。
エリザベスカラーをしていても、ソフトカラーだったりする場合も要注意です。
ソフトカラーだと、本当に痒い時はカラーを変形させて掻くことができてしまいます。
また、布素材だとカラーで眼を擦っている場合もあります。
さらに、ハードカラーをしている場合でも、わんちゃんは首が細い子が多いのでカラーが首の下の方に下がると
マズルがカラーからはみ出してしまうことがあります。
このマズルがはみ出しているようなサイズだと、眼を掻けてしまうので、他の病気の時に使っていて大丈夫でも眼の疾患の場合は不十分ということもあります。
三つ目は、
お散歩などで眼に刺激がないかどうかです。
眼に傷があるとどうしても見えづらくなります。
いつもは避けているものを避けきれずに眼に接触させている場合もあるので、お散歩などに行かれる場合は十分に気をつけてもらえたらと思います。
四つ目は
痛み止めの点眼に関してです。
角膜潰瘍は痛みが強いのでNSAIDsと言われている痛み止めの点眼を加えがちです。
この痛み止めの点眼が問題で、角膜上皮の修復を遅延させることがわかっています。
痛みが強い場合は、内服でNSAIDsを使ってもらった方がいいです。
難治性角膜潰瘍
しっかりカラーや治療をしていても、治らない場合もあります。
検査でも、傷を染色するフルオルセイン検査で傷の周囲が滲んだように染まるものや、染まった部分を綿棒で擦ると角膜がズルッと剥けてしまうような角膜潰瘍をSCCEDS(スケッズ)といいます。
SCCEDSは角膜上皮の接着不良によって角膜が正常に修復されないことで起こります。
若いときは、特に問題がなく治っていても、加齢によってSCCEDSになることもあります。
SCCEDSが疑われた場合、角膜を再接着させるために綿棒で角膜の表面を擦るデブライドという作業をします。
何回かデブライドをすることで治ることありますが、治らない場合は針で角膜表面を格子状/点状に切開したり、ダイヤモンドバーで表面を削るような処置をします。
それでも治らない場合は、メス刃での角膜の掻爬や角膜表層切開といった処置をして治します。
最後に
角膜潰瘍は治らないとSCCEDSだと思われがちなのですが、意外とカラーの問題などちょっとしたことが原因になっていることも多いです。
眼に刺激があるといつまでも治らないので、なかなか治らない場合は何か原因がないかを考えてみるようにしてみてくださいね。
それでは、また次回のコラムでお会いしましょう!

執筆者
2010年 北里大学獣医学部卒業
大阪、東北の動物病院を経て、
2015年~2016年 北里大学附属小動物医療センター研修医
2016年~2024年 大阪市内の動物病院の開業業務にたずさわり、院長として勤務
2024年 オンラインどうぶつ病院Talkvets立ち上げ