
もくじ
1. ごあいさつ
3.最後に
ごあいさつ

こんにちは。
オンラインどうぶつ病院Talkvets獣医師の前田です。
昨日おおくりしたCBDとTHCについてのお話の続きとして、本日はもう少し踏み込んでCBDの可能性や適応についてをまとめたいと思います。
これから日本でも動物病院で使われる機会が増えていくと思う成分なのでご紹介できたらと思います。
獣医さんが解説する話題の麻薬成分CBDの可能性

CBDとは?
CBD(カンナビジオール)とは、大麻草の茎や種から抽出したもので、大麻が持つ精神活性作用(ハイになる作用)や依存性を持つ成分がほぼ含まれないように法律で規制がかかっている麻薬由来ではあるものの合法の成分です。
アメリカでここ数年でわんちゃんでの研究が増え、臨床使用される機会が増えてきた成分です。
日本ではもともと、大麻草の茎や種から抽出したCBDは合法とみなされていましたが、法律改正によってCBDに含まれる有害作用をもつ成分(THC)の量で規制がかけられる成分規制に変更されました。
これにより、日本でも医療分野でより使いやすくなった印象があります。(ただし、本来的に麻薬由来の成分なので販売元などについてはしっかり確認する必要があります。アメリカでのペット用CBD製品の成分分析の結果の話をVol.151に書いていますので、ぜひ併せて読んでいただければと思います。)
主な作用は鎮痛、鎮静、リラックスですが、今回は海外での研究などをもとにした実際の適応の話や将来的に可能性のある疾患などについてまとめてみたいと思います。
適応が検討されている病気とその用量
①変形性関節症
コーネル大学での研究では、変形性関節症の犬の80%以上で疼痛が軽減したと報告されています。
また別の研究では犬の変形性関節症では0.25mg/kg~2mg/kgBID(1日2回)で良好な反応を示し、NSAIDsやガバペンチンの投与量を減量できたと報告されています。
さらに具体的な投薬量減量に関しての研究では、ガバペンチンを服用していた23頭の犬にCBDオイルを追加投与したところそのうち10頭がガバペンチンから離脱でき、残りの13頭中の11頭で20~60%減量できたと報告しています。
②てんかん発作
ある研究では、2.5mg/kgBIDのCBDオイルと抗てんかん薬の併用で発作が33%減少したと報告があります。
ただし、他の疾患より高用量でのCBDの投与が必要となる可能性があり、2-10mg/kg BID-TID(1日2回-3回)での使用が記載されています。(Advances in Small Animal Medicine and Surgery Volume 33, Issue 11 November 2020)
③不安
CBDには不安の軽減にも効果があります。
不安に対する効果は低用量から得られる可能性が示唆されており、コーネル大学での研究でCBDガムを与えることで83%の犬でストレスや不安に関連する行動が減ったと報告されています。
慢性的な不安には0.25-1 mg/kg BID(1日2回)で使用されています。(Advances in Small Animal Medicine and Surgery Volume 33, Issue 11 November 2020)
④腫瘍
現状では、CBDは腫瘍に関連した症状や疼痛の緩和に用いられています。
ただ、研究レベルで言うと、CBD自体ががん細胞に対してアポトーシス(細胞をやっつける)作用をもつ可能性や、特定の抗がん剤との併用による相乗効果が期待されており今後の研究が待たれるところです。
⑤アレルギー
オーストラリアのCannpalという医療品関連企業の研究では、痒みや痒みによる噛み癖のある犬の65%で痒みと噛み癖が少なくとも50%以上軽減し、その中の半数は痒みの症状がなくなったと報告されています。
また、犬の皮膚には健康な状態でもCB1受容体とCB2受容体の発現が報告されており、CBDの局所投与(塗り薬など)が作用する可能性や炎症を抑える効果が期待されており、0.5-1mg/kg BID(1日2回)程度で使用されています。(Advances in Small Animal Medicine and Surgery Volume 33, Issue 11 November 2020)
副作用/導入について
副作用としてあげられるのが、食欲増進効果や鎮静、口の渇き、軽度の下痢などです。
また、高用量で使用するとALPという肝酵素が上昇するという報告もあり、定期的に肝数値のモニターが推奨されていること、シトクロムP450という薬物代謝酵素を阻害するため他の薬剤との併用に注意が必要です。
多くの症状は0.5~2mg/kgBID(1日2回)で良好な反応を示し、副作用も軽度ではあるものの個体差などもあるため、導入時は1/4~1/2量を夕方にSID(1日1回)から投与を開始し、徐々に増量し目標の用量まで増量していきます。
参考:CBD dosing: a targeted approach(Petcann)
CBD: What you need to know about its uses and efficacy(Cornel University College of Veterinary Medicine)
最後に
前回も書きましたが、麻薬と聞くと拒否反応が出る人も多いと思います。
ただ、医療面で言うと麻薬はなくてはならない薬なので、副作用なくややこしい手続きなく(麻薬の管理には資格が必要でかなり厳格に管理されています)麻薬の効果がある薬があれば…というのはみんなが思っているのではないかと思います。
今から、獣医さんにこの成分を勧められる方も増えていくのではないかと思うので、そういった方の不安の解消の一助になれれば幸いです!
それでは、また次回のコラムでお会いしましょう!

執筆者
2010年 北里大学獣医学部卒業
大阪、東北の動物病院を経て、
2015年~2016年 北里大学附属小動物医療センター研修医
2016年~2024年 大阪市内の動物病院の開業業務にたずさわり、院長として勤務
2024年 オンラインどうぶつ病院Talkvets立ち上げ