
もくじ
1. ごあいさつ
3.最後に
ごあいさつ

こんにちは。
オンラインどうぶつ病院Talkvets獣医師の前田です。
今週は月曜日が祝日だったので、少し間があいてしまいましたが、本日から動物さんの認知症についてシリーズでおおくりしていこうと思っています。
今日は、そもそも認知症があるのかという話と、認知症って何?という話をしたいと思います。
獣医さんが解説する動物も人みたいに認知症になるの?

動物さんと認知症
高齢化が進む現代社会では、認知症はよく聞く問題の一つだと思います。
これは実は動物さんの世界でも一緒で、以前より認知症が問題になるケースが増えてきたように思います。
獣医さん的に、動物病院では痴呆や痴呆症状という方が聞き馴染みがあるといえばあるのですが、今の基準としては認知症の方が表現として適切なのでここではわんにゃんの認知症の実態という形で書かせていただければと思います。(痴呆も認知症も同じ意味です。)
実際に認知症はあるかという話をすると、これに関しては認知症はよくあります。そしてそういう子によく会いますと答えれると思います。
1つのデータでは、11~12歳のわんちゃんの約28%、15~16歳のわんちゃんの約68%で何らかの認知症の症状があるということが言われていて、年齢とともに直線的にその割合が増えていきます。
ねこちゃんだと、11歳以上の約28%で軽度の認知機能の低下が確認されており、15歳以上になると50%以上で何らかの認知行動の変化があると言われています。
実際に、診察していてもわんちゃんでもねこちゃんでも認知機能に問題がある子はよくいます。
ただ、治療対象になっていない子も多いので、よくある病気でよく会いますというのが正しいのかなと思っています。
ただやっぱり最近はその中でも、認知機能を主訴として診察に来られるケースが増えてきました。
ちなみに相談を受けるのは、特にわんちゃんで多いです。
わんちゃんは、軽度の認知障害で治療対象にならない子も多いですが、急に症状が進んでしまって、生活介助が必要なところまで症状がきつくなってしまうこともあるからです。
一方で、ねこちゃんも高齢になってくると認知症が進んでくるのですが、わんちゃんとの違いはわんちゃんより症状の進行がゆっくりな子が多く、生活介助が必要な子はかなり高齢になっていて行動範囲も狭く、寝ている時間も長いのでわんちゃんよりもサポートしやすいことが多いと思います。
(わんちゃんの場合は、身体は元気で歩き回ってしまったり、夜泣きでご家族が寝れなかったりがきっかけで診察にこられるケースが多いです。)
人の認知症との違いって?
症状や治療などについては、明日、明後日のコラムにゆずるとして、そもそもわんちゃんとねこちゃんの認知症って何なのかという話からしていきたいと思うのですが、
まず、認知症という言葉自体は病気の名前ではなくて認知障害と言われる症状を出している状態のことを言います。
人の場合は、認知症になる原因として、アルツハイマー型認知症や脳梗塞、脳出血、レビー小体型認知症などなど様々な病気があるのですが、わんちゃん、ねこちゃんの場合はアルツハイマー型認知症と同じようなメカニズムで認知障害が起こることがわかっています。(脳梗塞、脳出血やその他の原因もなくはないですが、人に比べてかなり少数です。)
ちょっと違いがあるとすると、人のアルツハイマー型認知症の場合は、まず初期の発火点として加齢によってアミロイドβ(Aβ)という物質が分解しきれなくなって脳に沈着します。アミロイドβ(Aβ)が沈着していくことで神経細胞の環境が変化し、次にタウタンパク質が過剰にリン酸化されゴミのように蓄積し、蓄積したタウタンパク質が神経細胞を壊していくことで病状を進行させていきます。
わんちゃんやねこちゃんの場合は、アミロイドβ(Aβ)が人と同じように沈着していくことがわかっていますが、その次のタウタンパクのリン酸化は一部でしか確認されていません。
今、人のアルツハイマー型認知症の研究がかなり活発で、特に初期のアミロイドβ(Aβ)に関する研究が進んでいるのでわんちゃん、ねこちゃんでも応用できる日は近いかもしれません。
最後に
今日はイントロダクションとしてメカニズム的なことも少し書いてみました。
明日は今日よりもうちょっと実際の症状や認知症かもと疑うポイントなどを獣医さんの経験なども踏まえてまとめていきたいと思っています。
それでは、また次回のコラムでお会いしましょう!

執筆者
2010年 北里大学獣医学部卒業
大阪、東北の動物病院を経て、
2015年~2016年 北里大学附属小動物医療センター研修医
2016年~2024年 大阪市内の動物病院の開業業務にたずさわり、院長として勤務
2024年 オンラインどうぶつ病院Talkvets立ち上げ