獣医さんのコラム(286)獣医さんが解説する多飲多尿になる病気(その他の疾患編)

もくじ

1. ごあいさつ

2.獣医さんが解説する多飲多尿になる病気(その他の疾患編)

  内分泌疾患以外でも多飲多尿になる柴犬

  慢性腎不全

  肝不全

  感染症

  ・心因性多飲

3.最後に

ごあいさつ

こんにちは。

オンラインどうぶつ病院Talkvets獣医師の前田です。

本日は、昨日に引き続き「多飲多尿」になる疾患と題して、内分泌疾患以外の病気についての話をしたいと思います。

内分泌系の疾患でも多いですが、その他のものでも意外と多いのでぜひ読んでいただけたらと思います。

獣医さんが解説する多飲多尿になる病気(その他の疾患編)

内分泌疾患以外でも多飲多尿になる

前回のコラムで内分泌疾患での多飲多尿についての話をしました。

内分泌疾患では、多尿⇨多飲という病態でしたが、今回ご紹介する多飲多尿の中には多飲⇨多尿というパターンもあります。

そして、内分泌疾患とは少し毛色が違う、麻酔をかけるときに問題になる臓器の疾患や多飲多尿を示し、さらに即、命に関わる疾患もご紹介したいと思います。

慢性腎不全

多飲多尿になる代表的な疾患の一つがこの慢性腎不全です。

急性腎不全だと、尿が出なくなるのですが、慢性腎不全では尿量が増えることが知られています。

腎臓は血液から原尿という非常に薄いおしっこを作り、そこから必要な水分などを再吸収し濃縮して、尿として排出しています。

急性腎不全は腎臓の機能がほぼストップしてしまうので、そもそも尿を作り出せなくなりますが、慢性腎不全の場合は、腎臓の再吸収、濃縮するという能力が低下し、原尿に近い尿を出してしまうようになります。

その結果、水分が体から失われてしまい、それを補うためにお水を飲むようになります。

肝不全

肝臓はアンモニアを代謝し尿素に変換する機能があります。

この尿素という物質は、老廃物というイメージがあるかもしれませんが、腎臓が水分を再吸収するときに必要な濃度勾配を作り出す役割(生体には濃度が濃い方を薄めようと水分が移動するという機能がある)があります。

肝不全、特にアンモニアが肝臓を通さず全身に流れてしまう血管異常の病気である門脈体循環シャントやそもそもの肝臓の代謝機能を失ってしまう慢性肝不全になるとアンモニアの代謝が低下し、多飲多尿になると言われています。

感染症

感染症の中でも一部の細菌(グラム陰性菌)が産生するエンドトキシンという物質は腎臓で抗利尿ホルモン(水分を身体に保持する働きのあるホルモン)が作用するのを妨害することがわかっています。

そのため、グラム陰性菌が身体の中で感染すると尿の水分を再吸収する量が減ってしまい、多尿になり、それに伴い多飲も起こります。

ちなみに、グラム陰性菌というと難しく聞こえますが、その代表選手が大腸菌です。

そして、大腸菌が原因菌のほとんどを占める子宮蓄膿症は、多飲多尿を示す感染症の代表格です。

未避妊のメスが急な食欲低下、おりものがつく、多飲多尿があるといった場合は、子宮蓄膿症の可能性がかなり高いです。

この病気は、治療が遅れると致死的な病気なので、なるべく早く病院へ行ってください。

心因性多飲

最後にご紹介するのが、心因性多飲です。

比較的若いわんちゃんで多飲多尿がある子を調べると、検査をしても何も異常が見つからないという場合があります。

その場合に最後に上がってくるのがこの心因性多飲です。

わんちゃんやねこちゃんの中には、ストレスや習慣などが原因でお水を大量に飲む子がいることがわかっています。

基本的には、他の疾患がないかを除外した上で診断するのですが、この疾患に関しては他の病気と違って多飲⇨多尿になるパターンで多飲多尿が起こります。

この多飲の状態が長く続くと、今度は正常の飲水量に戻ったとしても腎臓で水分を再吸収できなくなるという二次的な尿濃縮障害が起こることもあり、意外と難しい疾患でもあります。

最後に

若いときはお水を飲む量が少ないことが問題になる子も多いので、慢性疾患で徐々にお水を飲む量が増えていくと、良いことだと思われていることもあったりします。

そんなわけで、意外と多飲多尿の症状があることを獣医さんも知らないこともあったりします。

もし、飲水量の変化に心当たりがある方がいれば、ぜひおしえてもらえるといいと思います!

それでは、また次回のコラムでお会いしましょう!

執筆者

2010年 北里大学獣医学部卒業

大阪、東北の動物病院を経て、

2015年~2016年 北里大学附属小動物医療センター研修医

2016年~2024年 大阪市内の動物病院の開業業務にたずさわり、院長として勤務

2024年 オンラインどうぶつ病院Talkvets立ち上げ

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