もくじ
1. ごあいさつ
3.最後に
ごあいさつ
こんにちは。
オンラインどうぶつ病院Talkvets獣医師の前田です。
赤み痒みシリーズ第4弾、いよいよ治療についてのお話になります。
わんちゃんとねこちゃんで治療方法が違うので、2回に分けておおくりします。
本日は、わんちゃん編として皮膚炎の治療とアレルギーの治療、その2つとも必要な場合について、主に治療に使われるお薬の話をまとめてみたいと思います。
参考になれば嬉しいです!
獣医さんが解説する痒みの治療
・皮膚炎の痒みで使う薬
皮膚炎が目立つ場合は、皮膚炎を治すことが痒みの治療になります。
皮膚炎は大体検査をすると細菌やカビ、ダニなどが感染しているので、
原因にあわせて、細菌の場合は抗生剤、カビの場合は抗真菌薬、ダニの場合は滴下剤やフィラリア薬として使われている駆虫薬などを用いて治療します。
ちなみに、カラーをして皮膚炎を舐めないようにすることも重要なのと、痒み自体を抑える薬を併用することもあります。
感染といっても、2パターンあり
外から感染しているパターン(代表例:糸状菌、カイセンなど)と、常在している細菌やカビ、ダニ(代表例:球菌、マラセチア、ニキビダニ(アカラス)など)が増えすぎて皮膚炎を起こしているパターンがあります。
ちなみに、基礎疾患があっての皮膚炎は、基本的に常在の病原体が増殖して炎症を起こしています。
この場合、感染している病原体だけを治療してもよくならないことが多いので注意が必要です。
・アレルギーの痒みで使う薬
一方で皮膚炎のない痒みでアレルギーを疑う場合は、アレルギーを抑える治療が痒みを抑えることになります。
アレルギーの治療には、古典的にはステロイドが第一選択で使われていて、ステロイドで管理できない場合は、免疫抑制剤を使っていました。
ステロイドは良い薬ですが、ホルモン剤なので、使い方を間違えると副作用が出ることが問題になっていました。
そこで登場したのが、アポキルという薬です。
アポキルは、ステロイドが持つ作用の一つである痒みの受容体をブロックする薬です。
アレルギーは自分の免疫が自分を攻撃している状態で、ステロイドや免疫抑制剤にはその過剰な免疫を抑える効果がありますが、アポキルは痒みの受容体を抑えているだけなので全体的な効果としては弱いです。
ただ、アレルギーは治る病気ではなく一生付き合っていかないといけない体質です。
一生にわたって、コントロールしていかないといけないので、痒みを完全に止めるというよりは、副作用を出さないように我慢できる範囲におさめていくことを目標にすることが多く、そういう意味ではアポキルはとても使いやすい薬です。
先生によって好みはあると思いますが、わんちゃんの場合はアポキル、ステロイド、免疫抑制剤の3つをその子の症状に合わせて使い分けて治療しています。
さらに、補助治療として、アポキルと同じ系統の薬でサイトポイントという4週間作用する注射薬を使ったり、抗ヒスタミン剤や薬用シャンプーを使ったりもします。
・皮膚炎の薬とアレルギーの薬の両方が必要なとき
皮膚炎の項目でも少し触れましたが、皮膚には正常な状態を保とうとする機能があります。
普段、皮膚表面や毛穴にいる細菌やカビ、ダニは一定以上は増えないように保たれているのですが、アレルギーなどの皮膚の恒常性を乱す要因があると、このバランスが崩れて異常増殖しやすくなります。
そのため、アレルギーを持っているわんちゃんは、アレルギーによる痒みとは別に常在病原体の二次増殖による皮膚炎と痒みが起こりやすいです。
病原体への薬だけで落ち着く場合もありますが、それだけでは治らず、アレルギーも同時に抑える必要がある場合もあります。
なので、はじめて治療する場合は、一旦病原体への治療をしてみて、ダメならアレルギーの薬を追加、
それでもダメなら、アレルギー食を検討したりという、段階を踏んで薬や治療を増やしていくことも多いです。
最後に
アレルギーは厄介な病気だと思います。
全然治らないと悩んでいる方や、薬がどんどん増えて…と不安になる方も結構いらっしゃいます。
病態や持っているアレルギーが人それぞれなので、他の人と同じ治療をしてもよくならない場合も多いです。
ネット情報が本当に当てにならない病気ということをぜひ覚えておいていただけたらなと思います。
次回は、ねこちゃんの治療についておおくりする予定です。
それでは、また次回のコラムでお会いしましょう!
執筆者
2010年 北里大学獣医学部卒業
大阪、東北の動物病院を経て、
2015年~2016年 北里大学附属小動物医療センター研修医
2016年~2024年 大阪市内の動物病院の開業業務にたずさわり、院長として勤務
2024年 オンラインどうぶつ病院Talkvets立ち上げ