
もくじ
1. ごあいさつ
3.最後に
ごあいさつ

こんにちは。
オンラインどうぶつ病院Talkvets獣医師の前田です。
お口の問題は悩んでいらっしゃる方が多いですよね。
昔はひどくならないと麻酔処置までしない方も多かったですが、今ではひどくなる前にきれいにしようと思ってもらえることが多くなってきて獣医さんとしては嬉しい限りです。
さて、今日は歯周病コラムシリーズの第2弾として、歯周病をそのままにしているとどうなるのかというところを解説してみようと思います。
獣医さんが解説する歯周病がひどくなるとどうなるの?

わんちゃんの歯周病がひどくなると出てくる症状
前回のコラムでも少し触れましたが、
わんちゃんの歯周病がひどくなると問題になるのは歯根膿瘍です。
歯根膿瘍は、歯の根本に細菌感染をおこして歯根が溶けてしまう病気です。
歯根が溶けてしまうだけだとまだ表面的には症状がわかりにくいですが、それがさらにひどくなると歯根で溜まった膿の逃げ場がなくなって、頬(目の下のあたり)が腫れてしまいます。
腫れるだけですむ場合もありますが、頬の腫れている部分に穴があいて膿が出てくることもあります。
大体は、奥歯の歯根が深い歯が原因でおこることが多いです。
ちなみに頬の腫れは、抗生剤でおちつかせることができるのですが、内科的にはおちつかない歯根膿瘍が起こす疾患もあります。
それが口腔鼻腔瘻です。
口腔鼻腔瘻は、上顎の歯根膿瘍が原因でおこります。
これは歯根の感染で歯の根本を溶かすだけではなく、歯根が埋まっている歯槽骨という骨も溶かしてしまい鼻腔まで貫通してしまい、炎症や感染が鼻にも広がってしまう病気です。
抗生剤を飲むとそのときだけはマシになるものの、歯の根本の感染を除去しない限りは鼻腔の中の炎症も治らず、くしゃみ鼻水が慢性的に続きます。
さらに、下顎で歯根膿瘍を悪化させてしまうと、これも歯槽骨を溶かしてしまうことで最終的に下顎骨の骨折につながることもあります。
細菌自体はどこにでもいるものですが、それが感染すると骨まで溶かしてしまうというのは本当に怖いですよね。
ねこちゃんの歯周病がひどくなると出てくる症状
わんちゃんと違って、ねこちゃんの場合は、重症になるのは歯肉炎です。
口の中の全体の歯肉が真っ赤に腫れてじゅくじゅくしてきます。
ここまで症状が出てしまうと、お水を飲むのも、ごはんを食べるのも痛くて出来なくなり、よだれを垂らすようになります。
これは、ウイルスも関連していると言われていますが、体質によるものも大きく、口の中の細菌に対する免疫反応の一つと考えられています。
それ以外にも、わんちゃんのように歯根膿瘍が問題になることもあります。
ねこちゃんの歯根はわんちゃんほど深くないので、歯根膿瘍で歯槽骨を溶かす前に歯が抜けてしまうことが多いのですが、唯一、犬歯だけはかなり根が深いので、犬歯で歯根膿瘍があると口腔鼻腔瘻になってしまうことがあります。
わんちゃんと同様に、こうなってしまうと、鼻水とくしゃみが止まらなくなってしまいます。
ねこちゃんの場合は、自然に抜けて完治することもあるのですが、抜けない場合は根治するために抜歯が必要になります。
最後に
ちなみに、わんちゃんだとM .ダックスさんで重症化した子が多いなと思います。
おそらく、小型犬の割にダックスさんは歯が立派で歯根が深いことが関連しているのではないかと思います。
抗生剤で散らしても、また再発するので歯の問題はなかなか大変です。
次回は、そんな歯に問題が出た時の治療は何をするのかを解説しようと思います。
それでは、また次回のコラムでお会いしましょう!

執筆者
2010年 北里大学獣医学部卒業
大阪、東北の動物病院を経て、
2015年~2016年 北里大学附属小動物医療センター研修医
2016年~2024年 大阪市内の動物病院の開業業務にたずさわり、院長として勤務
2024年 オンラインどうぶつ病院Talkvets立ち上げ