
もくじ
1. ごあいさつ
・外耳炎
・耳血腫
・耳の腫瘍
3.最後に
ごあいさつ

こんにちは。
オンラインどうぶつ病院Talkvets獣医師の前田です。
動物病院で診る病気の中で耳のトラブルはかなり多いです。
先日、私も外耳炎になって、耳の痒みや痛み、音がよく聞こえないことも体験して、しみじみ患者さんたちの気持ちを考えさせられました。
たかが耳と侮るなかれ、かなりつらいものです。
今日はそんな耳の話をしようと思います。
獣医さんが解説する耳に起こる病気の話

外耳炎
耳の病気の中でダントツで多いのがこの外耳炎です。
外耳炎の原因は色々ありますが、繰り返す外耳炎も多く、その場合の1番の原因はアレルギーの場合が多いです。
ちなみに、ねこちゃんも外耳炎になりますが、繰り返す外耳炎は圧倒的にわんちゃんが多いです。
何かの原因で耳で炎症が起こると耳の中の常在菌やカビが増殖して炎症をさらに悪化させます。
なので、アレルギーなど基礎疾患が疑われる場合でも細菌性外耳炎やマラセチア性(常在カビ)外耳炎という名前がついて、耳の治療に使うお薬には差はありません。
基本的に炎症に伴って耳垢が大量に出てくるので、耳垢を洗浄して、点耳薬を塗布してもらい、ひどい場合は内服で抗生剤や抗真菌薬を飲んでもらって治療をします。
耳を触られることが苦手はわんちゃんやねこちゃんには1週間効くものや4週間効く点耳薬が発売されています。
一過性の場合は何日かで治り腫れていた耳の中も元に戻りますが、繰り返す外耳炎で慢性化してしまうと耳の中が厚くなってしまい耳の穴を塞いでしまい、より治りにくくなってしまいます。
たかが耳と侮るなかれ、慢性化した外耳炎は麻酔をかけて耳内視鏡による治療が必要になったり、それでも治らない時には耳道切除という手術をすることになります。
一過性のものはもちろんのこと、繰り返す外耳炎も必ず基礎疾患も含め適切な治療を受けてくださいね。
中耳炎/内耳炎
外耳炎から耳の奥に炎症が進むと、中耳炎や内耳炎になります。
こうなってくると、鼓膜を損傷して音が聞こえな状態になりますが動物さんの場合は、音が聞こえないという症状は見つからないことが多いです。(実際には鼓膜まで損傷して音が聞こえていない子はかなり多いと思います。)
急性だと斜頸や眼振といって首が傾いたり、目玉が揺れたりという症状が出るのでわかりやすいですが、慢性化すると症状がはっきりせずに、CTやMRIを撮ったときに中耳炎/内耳炎を指摘されることも多々あるので外耳炎に比べ認識されにくい病気と言えると思います。
内服で治療したり、重症の場合は鼓室胞切開という手術をして洗浄などを行います。
耳血腫
耳介が急にパンパンに膨らむ病気が耳血腫という病気です。
中には液体が溜まっていて、針を刺すと真っ赤な血様の液体が出てきます。
耳を掻いたりすることで、中の血管が損傷して耳の皮膚と軟骨の間に血が溜まるのではないかと言われていて、犬種でいうとフレンチブルドッグさんで多いです。
皮膚トラブルが多い、力が強いという条件が揃って発症しやすいのではないかと推測しています。
中の液体を抜いて、薬を入れて皮膚と軟骨の間の空間が圧着するように包帯を巻いて2〜3週間経過をみることが多いですが、非常に再発しやすいのが特徴です。
再発したり、なかなか圧着しない場合は手術をすることもあります。
治療しなくても時間が経つと治りますが、耳が潰れた状態で固まってしまうので注意してくださいね。
耳の腫瘍
耳に関連した腫瘍で1番多いのは、慢性化した外耳炎が原因で耳道の中にできるベリー状のできものかなと思います。
良性腫瘍のことが多いですが、この腫瘍があることで耳道が塞がって外耳炎も治らないという悪循環になることが多いです。
耳介に起こる腫瘍も有名で、主に白い猫ちゃんで耳の縁の方に腫瘍ができます。
これは悪性の扁平上皮癌のことが多く注意が必要です。
紫外線が関係していて、白い猫ちゃんはメラニン色素が少ないために紫外線の影響を受けやすいために腫瘍化すると言われています。
最後に
耳といえば外耳炎というのは間違いではないですが、それに関連して色々な病気が起こります。
最近では耳科という専門科を設けて治療をしていることも多いくらい困りごとの多い分野でもあります。
特に、繰り返すものには慢性化リスクが伴っているのでより注意していただきたいなと思っています。
それでは、また次回のコラムでお会いしましょう!

執筆者
2010年 北里大学獣医学部卒業
大阪、東北の動物病院を経て、
2015年~2016年 北里大学附属小動物医療センター研修医
2016年~2024年 大阪市内の動物病院の開業業務にたずさわり、院長として勤務
2024年 オンラインどうぶつ病院Talkvets立ち上げ