
もくじ
1. ごあいさつ
3.最後に
ごあいさつ

こんにちは。
オンラインどうぶつ病院Talkvets獣医師の前田です。
昨日、一昨日とわんちゃん、ねこちゃんのホルモンの病気をコラムにさせてもらいましたが、本日は最終回として番外編、薬を使いすぎてしまうことで起こるホルモンの病気の話をしたいと思います。
誰でも起こりうる病気なので、ぜひ知っておいてもらえればと思います。
ステロイドは危ない!?ステロイドが起こすホルモンの病気

ステロイドという薬を知っていますか?
皆さん、ステロイドという薬を知っているでしょうか?
なんとなく知っているけどよくわからないという方もいらっしゃるかもしれませんね。
ステロイドと一言で言っても、実はたくさんの種類があります。
わんちゃん、ねこちゃんでは、一般的にプレドニゾロンというステロイド剤を処方しています。
このプレドニゾロンという薬は、グルココルチコイドという成分です。
グルココルチコイドは、副腎の話も出てきた通り副腎皮質という場所でつくられているホルモンと同じものです。
そうです。
ステロイド剤を飲むということは体の中でつくられているホルモンと同じ成分を外から追加しているという状態なのです。
体の中にある成分なので、赤ちゃんでも使える体にやさしい薬でもあり、強い抗炎症作用もあり、免疫の暴走を抑える作用もあるとてもありがたい薬です。
ただ、一方で使いすぎると体の機能を損なってしまう薬でもあります。
この副作用面にスポットがあたってしまって怖い薬というイメージが先行しがちな薬でもあります。
医原性クッシング
ステロイドは怖いというイメージがあるかもしれませんが、ステロイドが怖がられている実態は、医原性クッシングを起こすからです。
この医原性クッシングとは、副腎編でまとめたクッシング症候群と同じ症状を薬でつくってしまっている状態です。
具体的には、毛が抜けてきたり、パンティングをよくするようになった、お腹が出てきたなどの見た目の症状が気になるパターンが多いです。
その他にも、肝数値、肝肥大、脂質代謝異常など様々なことを起こします。
こういった副作用が出てくると、ステロイドは怖いから薬をやめたい!という話になりますが、実は薬をやめれば済むという問題ではありません。
体は、ホルモンが多い状態を察知して体の中でそのホルモンをつくる量を調整するという生理的な機能があります。
そのため、ステロイド剤をずっと使っていると体は逆にそのホルモンを作れない病態に陥っています。
つまり、医原性クッシングを起こしているときは、症状は副腎機能亢進症ですが、体の中では副腎の機能が低下していて逆に副腎皮質機能低下症(グルココルチコイドがつくれない状態)になっているのです。
治療はステロイドの量を徐々に減らしていって自分でホルモンをつくるように促していくことになるため、ステロイドは急にはやめられないのです。
最後に
ステロイド剤は毛嫌いされることも多い薬ですが、とても良い薬でもあり欠かせない薬です。
獣医さんは医原性クッシングを起こさないように、なるべく量を減量して気をつけて使っていることがほとんどです。
それでも医原性クッシングになるパターンは、ステロイドをどうしても使わないといけない病気のことも多いです。
医原性クッシングかもと思ったときは、自己判断でやめずにより獣医さんとしっかり連携をとって治療をするようにしてくださいね。
そして、ステロイドアレルギーにならないでもらえると嬉しいです。
この薬で救われている命もすごく多いので、使い方次第ということを理解してもらえるととても嬉しいです!
それでは、また次回のコラムでお会いしましょう!

執筆者
2010年 北里大学獣医学部卒業
大阪、東北の動物病院を経て、
2015年~2016年 北里大学附属小動物医療センター研修医
2016年~2024年 大阪市内の動物病院の開業業務にたずさわり、院長として勤務
2024年 オンラインどうぶつ病院Talkvets立ち上げ