もくじ
1. ごあいさつ
4. 最後に
ごあいさつ
こんにちは。
オンラインどうぶつ病院Talkvets獣医師の前田です。
前回は、抗生剤や動物病院での抗生剤の処方についてお話ししてみました。
今回は、続きとして新型コロナウイルス感染症と勘違いされやすいわんちゃんとねこちゃんのコロナウイルス感染症について取り上げてみたいと思います。
実は、コロナウイルスについては病院でよく質問される話で、新型コロナウイルスが広く知られたことで説明しやすくなった病気です。
新型コロナウイルス感染症とコロナウイルス感染症
動物病院でもコロナウイルスは身近なウイルスです。
わんちゃんの混合ワクチンで予防する病気のひとつにコロナウイルス感染症があったり、ねこちゃんのうんちのPCR検査をするときに結果の中にコロナウイルスという項目があったりします。
一見すると、コロナウイルスってあのコロナのこと??となってしまうと思います。
でも、実はわんちゃんとねこちゃんのコロナウイルスは、お腹に感染して子どもの時に軟便や下痢を起こす可能性がある程度の病原性の弱いウイルスです!
ただ、無害ですよというにはちょっと問題があります…
パンデミックで知れ渡ったようにコロナウイルスはとても変異しやすいウイルスです。
わんちゃんの場合は今のところ特に問題にはなっていないですが、ねこちゃんのコロナウイルスは変異して致死的なウイルスに変化することで知られています。
なので、動物病院でのコロナウイルスは新型コロナウイルスとは別物で病原性は低いことと、ねこちゃんはたまに大変な病気にかわりますということを毎回説明しています。
にゃんこのコロナウイルスにまつわる怖い病気
コロナウイルスは、ウイルスなので抗生剤は全く効かないのですが、病原性が低いので経過観察やひどい場合でも対症療法で自然に症状が治ります。
ただし、感染後にキャリアといってウイルスがずっと体のなかに残った状態になります。
ちなみに、ねこちゃんの約半数はコロナウイルスに感染してキャリアになっていると言われています。
コロナウイルスのタチが悪いのは、新型コロナウイルスと同様に変異する性質を持っており、変異すると猫伝染性腹膜炎を起こすFIPウイルスというウイルス変わって、致死的な病気を引き起こすことです。
この変異にはストレスや年齢による免疫の低下が関連しており、1歳以下のねこちゃんと高齢のねこちゃん、また多頭飼育のねこちゃんで発症が増加します。
ただし、1匹飼いの一見、ストレスとは無縁で何かに感染するような場所に行かないねこちゃんも、免疫の状態などによって発症することがあり、キャリアになっているコロナウイルスが突然変異し、食欲がなくなって発症に気づくということがままあります。
ごく最近まで、治療方法がなくほぼ100%亡くなってしまう病気でしたが、今は抗ウイルス薬が開発され治療できるようになりました。
ただし、抗ウイルス薬を持っている病院が近くにある環境かどうかや、薬があったとしても費用が高額になったりとまだまだ問題を抱えている状況です。
最後に
今回は、抗生剤から発展してウイルスの話、特にコロナウイルスの話をしてみました。
猫伝染性腹膜炎は昔からある病気ですが、変異したウイルスによる感染症なのでワクチンの開発は難しいと言われていました。
新型コロナウイルスが流行で、変異するコロナウイルスでもワクチン開発ができるようになったので、もしかしたら、猫の方でもワクチンが開発されていくのでは!?と期待が高まるばかりです。
今まで防げなかった病気を抑え込めるようになったら本当にすごいことですよね。
さて次回は、もうちょっと細菌の病気とウイルスの病気を取り上げてみたいと思っているので、今しばらくこのテーマにお付き合いいただければと思います!
それでは、また次回のコラムでお会いしましょう。
執筆者
2010年 北里大学獣医学部卒業
大阪、東北の動物病院を経て、
2015年~2016年 北里大学附属小動物医療センター研修医
2016年~2024年 大阪市内の動物病院の開業業務にたずさわり、院長として勤務
2024年 オンラインどうぶつ病院Talkvets立ち上げ