
もくじ
1. ごあいさつ
3.最後に
ごあいさつ

こんにちは。
オンラインどうぶつ病院Talkvets獣医師の前田です。
先々週、先週と関節症の話をしてきて、先週のサプリメントの話で最終回にしようと思っていたのですが、
猫好きとして(?)どうしても最後にねこちゃんについてをまとめておきたくなったので、予定を変更して最終回の最終回としてねこちゃんの話をしたいと思います。
獣医さんが解説するねこちゃんの関節・Now!

ねこちゃんを取り巻くNow
わんちゃんでは変形性関節症はだいぶ以前からホットトピックとして取り扱われてきました。
そして、2023年にはわんちゃんの変形性関節症についてCOAST(Canine Osteoarthritis Staging Tool)という国際同意も発表されています。
サプリメントの成分に関しても圧倒的にわんちゃんでの研究が進んでいます。
なぜわんちゃんの方が研究が進んでいるかというと、わんちゃんの方がわかりやすく症状を示すということがあると思います。
つまり、ねこちゃんの習性として痛みを隠すために、実数ほど症状として認識されておらず、その結果、病院に関節症を主訴に受診する数が少ないということでもあります。
ねこちゃんの関節症の症状は、痛みを隠すという性質通り跛行は比較的あらわれにくく、寝ている時間が増えたり、ジャンプしなくなったり、グルーミングや爪とぎが減ったりといった生活習慣の変化がメインとなってきます。
こういった症状は加齢によるものと区別しづらく、年のせいと飼い主さんも(時には獣医さんも)思ってしまいがちです。
他にも、病院で緊張のあまり身を固くしてしまったり、怒ってしまったりとわんちゃんより身体検査をしづらいといったことも関係があるのではないかと思います。
家でも症状を隠してしまい、受診の時の身体検査でも見つけられない状況だとなかなか鑑別診断にあがってこないというのが悩ましいところだと思います。
ただ、今の流れとしては、段々とねこちゃんの関節症にもスポットがあたってきており、まずは獣医さん側から飼い主さんに向けてねこちゃんの関節症についての説明をしていく段階にきていると思っています。
その一環として、現時点ではわんちゃんのように明確なステージ分けというものはありませんが、近年出ている知見での軽度 → 中等度 → 重度といった分類で治療指針を書いておきたいと思います。
ぜひ、お家の子が該当していないかを考えてみてくださいね。
①軽度変形性関節症
活動性はあるものの、ジャンプの回数が減ったりジャンプに時間がかかったりといった段階
通常は疼痛管理はまだ必要なく、最も重要なので体重管理。
運動制限は必要ないものの、滑り止めのマットや段差がないようにするなど環境整備は推奨されています
また、関節療法食(オメガ3脂肪酸配合)への変更も◎
②中程度変形性関節症
ジャンプしなくなる、グルーミングの減少や寝てばかりいるなどといった様子の変化も出てくる段階
触診では関節の可動域が狭くなっていたり、関節の触診で疼痛所見が出ることもあり
疼痛管理としてNSAIDs(痛み止め)での管理が重要だが、腎臓に負荷がかかるので体の状態をしっかりモニターする必要あり
状態によって抗NGF抗体(ソレンシアという月1度の注射薬)の使用も検討する
モエギガイ抽出物や非変性Ⅱ型コラーゲンといったサプリメントの併用も
過度な運動を制限し低負荷の運動への切り替え、マッサージ、レーザーも○
疼痛を管理できるかがQOLにとても重要な段階
③重度変形性関節症
起立歩行が困難なほど深刻な状態、グルーミングなども全くせず慢性疼痛がある状態
痛みの除去より緩和がメイン!
NSAIDs(痛み止め)と抗NGF抗体(ソレンシアという月1度の注射薬)の併用の推奨度が高い
疼痛緩和のための補助薬も併用(ガバペンチンなど)
とにかく環境整備(保温、介護ができるように整える)
理学療法も○(温罨法、ストレッチ、鍼灸など)
ねこちゃんのサプリメントの話
番外編として、わんちゃんのサプリメント成分の話もしていたのでねこちゃんで分かっていることも最後にまとめておきたいと思います。
①オメガ3脂肪酸(EPA+DHA)
わんちゃんでの推奨度No.1ですが、ねこちゃんでも推奨度が高いです。
わんちゃんよりデータは少ないものの、跛行や生活習慣の改善など報告あり
②非変性Ⅱ型コラーゲン
ねこちゃんの研究は安全性や忍容性の話が多いものの、有効性の報告は限定的
免疫寛容機序による関節炎抑制が主作用
期待されている成分という段階で日本では目立った製品がまだない
③モエギガイ抽出物
症例報告レベルや小規模の研究で有用と報告あり
嗜好性や忍容性が良い
アンチノールはこの成分が中心
④グルコサミン、コンドロイチン
わんちゃん以上にエビデンスが不足しているので効果がさらに限定的と考えられています
使用群と未使用群で差がなかったという結論も複数の研究であり
⑤CBD
わんちゃんに対しては研究があるものの、ねこちゃんではデータ不足
現行のレビューでは推奨できない/追加研究が必要となっていて、安全性についてもやや不安あり
最後に
書いているうちに、欲がでてしまってねこちゃんについてまとめてみました。
わんちゃんについても、ステージ分類などもう少し詳しくまとめたらよかったなと思いつつ、今回は長々と書いてしまったので一旦おしまいとしたいと思います。
わんちゃんについてはいつか補足したいと思っています。
それでは、また次回のコラムでお会いしましょう!

執筆者
2010年 北里大学獣医学部卒業
大阪、東北の動物病院を経て、
2015年~2016年 北里大学附属小動物医療センター研修医
2016年~2024年 大阪市内の動物病院の開業業務にたずさわり、院長として勤務
2024年 オンラインどうぶつ病院Talkvets立ち上げ