獣医さんのコラム(170)獣医さんが解説するその太りやすさ、病気かも?

もくじ

1. ごあいさつ

2.獣医さんが解説するその太りやすさ、病気かも?

  病気で太ることもある

  ホルモンはなぜ太らせるの?

  ・病気の紹介

 

 

3.最後に

ごあいさつ

こんにちは。

オンラインどうぶつ病院Talkvets獣医師の前田です。

先週、体型管理についてお話ししました。

体型を維持するのは、人にとっても動物さんにとっても永遠の課題かもしれません。

ただ、その中にはいつもと同じ量を食べていても、どんどん太っていってしまったり、食事制限しているのに痩せないということが病気のせいで起こることもあります。

そんな病的な肥満の話やなぜそんなことが起こるのかを解説していきたいと思います。

獣医さんが解説するその太りやすさ病気かも?

病気で太ることもある

実際問題、いくらダイエットしても体重が増えていく病気というのは世の中に何個も存在します。

例えば、深刻なもので言うと腹水がたまるような病気を持っていると見た目はあんまりかわらないのに、

なぜか体重が増えていくということがあります。

ただ、そこまで深刻な病気ではなくて、大きな症状があるわけでもないのにただただ太っていくといった系統の病気もあります。

それがホルモン系の病気です。

ホルモン系の病気は、発症したからといってすぐに何か大きな症状を出すわけではありません。

実は年単位で気づかないということもあります。

ただし、症状がわかりにくいためにリカバリーできない末期になってから発覚したり、他の病気を併発して重症化したりとある意味怖い病気です。

今日はそんな発覚しづらい病気の中でなぜか太ってしまう!?という症状が現れやすい病気をご紹介したいと思います。

ホルモンはなぜ太らせるの?

身体の中には色々な作用を持つホルモンがありますが、その中には、身体の中にため込む方向に働くホルモンと身体の中で消費を促すホルモンがあります。

この2つのホルモンは同時に存在しつつ、本来はバランスが保たれています。

そして、このバランスが崩れるときがすなわちホルモンの病気を発症した時なのです。

まず、身体の中にため込む方向に働くホルモンが過剰に出てしまうと、いくら食事を制限したところで

どんどん脂肪という形の貯蓄が増えていきます。

つまり太ってきます。

次に、消費を促すホルモンが欠乏してしまうと、消費量が少なくなっていき、本来必要な分のカロリーを使いきれずにたまってきてしまいます。

つまりこれも太ってしまいます。

この「ため込むホルモン」の代表選手が副腎皮質ホルモンで、これが過剰になる病気が副腎皮質機能亢進症=クッシング症候群という病気です。

一方、「消費を促すホルモン」の代表例が甲状腺ホルモンで、これが欠乏するのが甲状腺機能低下症という病気です。

この2つの病気を発症すると、どちらの病気も何かをかえたわけでもないのに太ってきた!ということが起こるわけです。

ちなみに、ねこちゃんでも起こらないわけではないですが、かなりレアなので基本的にわんちゃんの病気としてご紹介しようと思います。

病気の紹介

①副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)

中年齢以降で多い病気で、太りやすくなる以外に飲水量が増えたり、お腹が垂れてきたり、脱毛、皮膚炎も起こします。

この病気は内因性のステロイド(身体の中でつくられるステロイドホルモン)が増える病気なので、ステロイドの内服薬を服用した時と同じような症状が出ます。

この病気には2つの種類があり、副腎でのホルモン産生の指令を出す脳の下垂体という部分が過形成を起こしたり、腫瘍化して過剰に指令をだすことで副腎が腫大して過剰にホルモンを産生してしまう下垂体性が約90%、副腎自体が腫瘍化して過剰にホルモンをつくりだしてしまう副腎性が約10%と言われています。

症状や超音波検査での副腎の大きさなどから疑われた場合、ACTH刺激試験という検査をして診断し(その他に低用量デキサメタゾン抑制試験という検査をすることもありますが、ACTH刺激試験が1時間後の採血でよいのに対して、低用量デキサメタゾン抑制試験では4時間後と8時間後に採血が必要なため、基本的にはACTH刺激試験を第一選択ですることが多いです)、下垂体性の場合は副腎でのステロイドホルモンの合成を抑制する薬を内服してホルモン量を調整しながら維持することが多いです。

②甲状腺機能低下症

自己免疫性の炎症などによって甲状腺が萎縮してしまうことで甲状腺ホルモンがつくれなくなる病気です。

太りやすくなる以外の症状は、無気力(寝てばかりいる)、左右対称の脱毛、コレステロールや中性脂肪などの数値の上昇(脂質代謝異常)などです。

症状や血液検査から疑い、甲状腺ホルモンの数値を測って診断します。

甲状腺自体が萎縮してしまっているので、ホルモンを内服で補給する治療を行います。

最後に

以前にわんにゃんのホルモンの病気というタイトルでコラムに書いているので、もっと詳しく知りたいという方はぜひそちらの記事も読んでみてくださいね。

ちなみに、甲状腺の病気は人でもよく聞きますが、クッシング症候群と副腎皮質機能低下症を合わせると体感では人以上に出会う病気です。

特に中高齢は要注意です。

お心当たりがある方は、ぜひ病院に行ってくださいね!

それでは、また次回のコラムでお会いしましょう!

執筆者

2010年 北里大学獣医学部卒業

大阪、東北の動物病院を経て、

2015年~2016年 北里大学附属小動物医療センター研修医

2016年~2024年 大阪市内の動物病院の開業業務にたずさわり、院長として勤務

2024年 オンラインどうぶつ病院Talkvets立ち上げ

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