
もくじ
1. ごあいさつ
2.獣医さんが解説する気づかぬうちにたまる腹水って知ってますか?
3.最後に
ごあいさつ

こんにちは。
オンラインどうぶつ病院Talkvets獣医師の前田です。
動物病院では、ときどきお腹が異常に張っているのが心配で…という患者さんが来院されて、
腹水が発覚することも結構あります。
世間一般でいうと、腹水は重症のときに出るイメージがあるかもしれません。
確かに、そういう種類の腹水もあるのですが、実際には元気そうに見えるのに腹水がたまっていることもあるんです。
今日はそんな腹水について解説したいと思います。
獣医さんが解説する気づかぬうちにたまる腹水もあるって知ってますか?

腹水とは?
お腹の中の空間には、ご存じのとおり胃や腸、肝臓、腎臓といった臓器があります。
この臓器と臓器の間の空間には、通常はごく少量の液体がある程度です。
ただ、何か異常があるとこの空間に液体がたまってくることがあります。
これがいわゆる「腹水」です。
実はこの腹水にも種類があります。
なので、重症の時に出るというのも間違いなくて、実際には重症の時にも出るし、そうでない場合にも出るというのが正解です。
出るのは重症の時だけじゃない
動物病院で腹水をチェックする時は、主に超音波検査を使います。
さらに腹水がある場合は注射器を刺して採取し、検査します。
ちなみに、重症の時の腹水は濁っていることが多く、元気だけど腹水があるという場合は比較的サラサラしていることが多いです。
この違いは腹水が出てくるメカニズムの違うことで起こり、3つ種類に分けられます。
①強い炎症で出る腹水
炎症が強い時に出る腹水は滲出性腹水といって、腹水のなかに細胞がたくさん含まれていたり、時には細菌などがいることもあります。
見た目もドロドロしていて、この種類の腹水が出ていて他の症状がないことはまずありません。
かなり重症で緊急性も高いです。
②軽い炎症/うっ滞で出る腹水
軽い炎症の時や、血管内の圧力が上がって滲み出てくるのが変性漏出性腹水という種類の腹水です。
採取した時に、濁っているなという印象のある液体が取れることが多いです。
腹水の中では1番多いのがこの種類です。
③浸透圧でしみ出る腹水
採取すると透明のお水のような見た目の腹水が取れる時があります。
それがこの種類の腹水で漏出性腹水といいます。
主に血中の水分をキープしているタンパク質などが足りないことで、水分が滲み出てくることでたまります。
この中で③の漏出性腹水と②の変性漏出性腹水の一部は、病気だと気づかないうちにたまってくることがあります。
なので意外と他の症状がわからないまま、お腹が張ってきたのが気になって…というパターンでの来院もよくあるのです。
でも、腹水は何か原因がないとたまりません。
腹水以外に症状に気づかなかったとしても、ほぼ必ず病気が隠れています。
どんな病気の時に出るの?
ではどんな病気の時にそれぞれの種類の腹水が出るのかというと、
①の滲出性腹水は、
お腹の中で激しい炎症が起こる疾患、例えば消化管穿孔や癌性腹膜炎などで出てきます。
②の変性漏出性腹水は、
お腹の中に腫瘍があって血管を圧迫していたり、心臓が悪い時に出てきます。
他にも肝臓が悪くて門脈圧が上がっている時にも出てくることがあります。
③の漏出性腹水は、
タンパク漏出性の疾患などで、血管の中の浸透圧が下がるような疾患で出てきます。
激しい症状が伴う①の滲出性腹水の時は別として、
静かに症状を出しているような②や③のパターンの場合は、獣医さんも腹水の種類から病気を絞っていくこともよくあります。
みなさんも、気づかぬうちにたまる腹水を心にとめておいてください。
そしてお腹が張っているなと思ったら、元気そうに見えてもぜひご相談してくださいね。
最後に
明日は、具体的に子犬さん、大型犬さん、小型犬さんに分けて気づかぬうちに腹水がたまる病気を解説してみたいと思います。
ちょっと小難しい話題を取り上げてみましたがどうだったでしょうか?
それでは、また次回のコラムでお会いしましょう!

執筆者
2010年 北里大学獣医学部卒業
大阪、東北の動物病院を経て、
2015年~2016年 北里大学附属小動物医療センター研修医
2016年~2024年 大阪市内の動物病院の開業業務にたずさわり、院長として勤務
2024年 オンラインどうぶつ病院Talkvets立ち上げ