
もくじ
1. ごあいさつ
・網膜剥離
・視神経炎
3.最後に
ごあいさつ

こんにちは。
オンラインどうぶつ病院Talkvets獣医師の前田です。
今日は久しぶりに眼科の話題を取り上げたいと思います。
目が見えないって意外と気づかないという話を以前したのですが、今回は両眼ともに急に失明してしまうような病気を3つ選んでご紹介します。
獣医さんが解説する突然失明する病気3選

突発性後天性網膜変性症候群(SARDS)
長くてややこしそうな名前ですが、一言で言うと急に網膜がおかしくなって目が見えなくなる病気です。
特徴としては、中高齢で急性に両眼が見えなくなることとクッシング様の症状が伴うことがあることです。
発症の原因は今のところはっきりしておらず、治療法もありません。
好発犬種としては、M .ダックスフンド、パグ、ミニュチュアシュナウザーetcと言われていますが、実際には色々な犬種で発症します。
基本的に小型〜中型犬で多く、それに比べ大型犬での発症はかなり少ない傾向があります。
治療法がないため、家の中の家具の配置をかえない、急に触ったりしない、お散歩コースを固定するなど生活に配慮した生活をしてもらうようお話しして色々と工夫をしてもらうことにはなりますが、目が見えなくても生活はある程度支障なくできることが多いです。
網膜剥離
わんちゃんの網膜剥離は、頭を振っているうちに網膜が剥がれてしまう外傷性網膜剥離が多いです。
特に、硝子体変性を起こしやすくおもちゃを咥えて振り回したり、外耳炎で耳を振ったりするわんちゃんで発症しやすいと言われています。
好発犬種はシーズー、ボストンテリア、プードル、ジャックラッセルテリアなどがです。
ただし、わんちゃんの網膜剥離は、今回のテーマの両眼の急性失明とは違い、片側性で起こることが多いです。
両眼で急に発症する網膜剥離は、実はねこちゃんでとても多いです。
ねこちゃんがお年をとると、腎臓病や甲状腺機能亢進症などから高血圧になりやすいです。
血圧が高い状態が続くと、網膜下に出血したり、滲出液がたまって網膜が剥がれてしまいます。
片眼で発症することもありますが、52.2%は両眼性と言われていて、実際病院でも両眼ともに剥がれているねこちゃんを診る機会が多いです。
原因となっている高血圧を解消し、うまく網膜が再癒着できると視力が多少戻ることが期待できるのですが、ねこちゃん自体病院で血圧を測ると高く出てしまいやすく、短時間でピタッと血圧をコントロールすることが難しいことが多いので、実際にはなかなか視力を回復させれないことが多いです。
余談としてわんちゃんは、剥離したてで網膜手術ができれば視力の回復の可能性もあるのですが、まだまだ網膜手術をしている病院が眼科専門病院でもかなり少ないので、実際にはなかなか手術まで受けれないことも多いです。
視神経炎
わんちゃんでたまにあるのがこの視神経炎です。
特発性視神経炎といって免疫性に突発的に視神経だけに炎症が起こるパターンもありますが、肉芽腫性髄膜脳炎(GME)などの脳炎の症状として視神経炎が起こる場合もあります。
どちらの場合も、基本的に両眼で急性に発症します。
普段、目の病気でMRI(主に脳や脊髄を画像診断する検査)が必要なことは滅多にないのですが、この視神経炎を疑う場合はMRI検査をして視神経以外に病変がないかをチェックします。
特発性視神経炎の場合は、ステロイドである程度視力が戻ってくることが多いです。
最後に
わんちゃんの盲目といったら進行性網膜萎縮症(PRA)が有名じゃないかと思うのですが、今回は急に失明する病気ということで、夜盲から始まって…という経過があるPRAは外して、他の病気を3つご紹介してみました。
でも、夜盲の間に気づけることが少ないのでPRAも急に失明する病気といってもいいかもしれません。
また機会をみて、この病気もコラムに書きたいと思っています。
それでは、また次回のコラムでお会いしましょう!

執筆者
2010年 北里大学獣医学部卒業
大阪、東北の動物病院を経て、
2015年~2016年 北里大学附属小動物医療センター研修医
2016年~2024年 大阪市内の動物病院の開業業務にたずさわり、院長として勤務
2024年 オンラインどうぶつ病院Talkvets立ち上げ