獣医さんのコラム(276)獣医さんが解説する犬・猫で珍しく進行が遅い腫瘍3選

もくじ

1. ごあいさつ

2.獣医さんが解説する犬・猫で珍しく進行が遅い腫瘍3選

  予後を確保できる腫瘍は希少予後を確保できる腫瘍は希少

  犬の肝細胞癌

  犬の精巣腫瘍

  ・猫の低悪性度消化管リンパ腫

 

3.最後に

ごあいさつ

こんにちは。

オンラインどうぶつ病院Talkvets獣医師の前田です。

本日は、腫瘍の話を取り上げたいと思っています。

最近の人の腫瘍の治療は多岐にわたっていて、昔と比べると予後が改善しているなと感じます。

一方で、腫瘍は動物たちでもとても多い病気なのですが、人と比べるとなかなか難しいというところもあります。

その中でも比較的珍しい犬・猫でも予後が確保しやすい進行がゆっくりな腫瘍の話をしたいと思います。

獣医さんが解説する犬・猫で珍しく進行が遅い腫瘍3選

予後を確保できる腫瘍は希少

冒頭でも書いた通り、犬・猫の腫瘍の治療は人と比べると予後がなかなか難しいというところがあります。

というのは、第1に、人より4倍速で年をとっているということにも関連して、人と比べると進行がとても早いということがあげられると思います。

あとは、発見時期も自分で症状が申告できない分遅くなりがちということや、治療方法のオプションが少ないということも関連していると思います。

治療側としては、手術で取りきれて悪性度がそこまで高くないもの以外は手術して抗がん剤も頑張って1年の壁がとても厚いというのが大まかな実感です。

人の時間のスケールで考えるとこんなに頑張っても…と思われることも多いです。

そういった犬・猫の腫瘍事情を踏まえると、腫瘍の中でも進行が遅い種類はとてもレアな存在です。

今回はそんな腫瘍を3つご紹介しようと思います。

犬の肝細胞癌

まずは、犬の肝細胞癌です。

悪性度が高いび慢性や多結節タイプもあるのですが、53~84%は大きな1つの腫瘤塊を形成します。

このタイプの肝細胞癌はかなり大きくはなるのですが、転移しづらく、手術が可能な場所であれば予後は良好です。

ただし、腫瘍がある場所が肝臓という血管も複雑に入り込む臓器のため、後大静脈や門脈、肝静脈といった血管系に隣接している場合は手術が難しいことがあります。(一般的には右側だと手術の難易度が跳ね上がります)

そのため、手術ができなかったり、高齢のため手術を避けたいという患者さんも多い腫瘍でもあります。

ただ、それでも対症療法のみで1年程度の予後を確保できるパターンが多いです。

もちろん、発見した時期やその子の状態にもよるのですが、肝細胞癌の患者さんは本当に最後の最後まで食欲もあり元気に過ごしてくれる子が多いです。

犬の精巣腫瘍

犬の精巣腫瘍も比較的予後が良好な腫瘍の一つです。

精巣腫瘍には大きく分けて3種類(セミノーマ、セルトリ細胞腫、ライディッヒ細胞腫)あります。

セミノーマは大型化しやすく、セルトリ細胞腫はエストロジェンという女性ホルモンを産生することがあったり、ライディッヒ細胞腫も男性ホルモンを産生して腫瘍性のホルモン過剰の症状を併発する場合があります。

ただ一方で、精巣という場所が手術で摘出がしやすい場所であり、転移率は10%前後と低いことが多いので、発見が遅れても取り切ってしまえば予後が良好なことが多い腫瘍でもあります。

猫の低悪性度消化管リンパ腫

わんちゃんにも低悪性度の消化管リンパ腫という病気があり、こちらも比較的予後が長くとれる腫瘍なのですが、それよりさらにコントロールしやすいのが猫の低悪性度消化管リンパ腫です。

消化管リンパ腫の中には高悪性度のものもあり、こちらは塊状の腫瘤を形成することが多いので比較的見つけやすいのですが、低悪性度のものは腸管にび慢性に広がっていることが多く見つけづらいという特徴があり、診断は内視鏡生検か開腹生検となることが多いです。

境界が不明瞭なため手術ができるタイプの病気ではないのですが、ステロイドや内服の抗がん剤で生存中央値が1.5~3年、長い子だと4~5年の余命を確保できることもある腫瘍です。

最後に

不幸中の幸いという言い方はあまり良い表現ではないなと思います。

それでも、日常的に腫瘍を発見して説明する獣医師の立場としては予後の取れる可能性のある腫瘍だと、そう表現したい気分になったりします。

予後の取れない腫瘍の可能性を伝えるのはやっぱりつらいものだからです。

今回のコラムも動物たちの腫瘍治療の現状の1つとして参考になれば幸いです。

それでは、また次回のコラムでお会いしましょう!

執筆者

2010年 北里大学獣医学部卒業

大阪、東北の動物病院を経て、

2015年~2016年 北里大学附属小動物医療センター研修医

2016年~2024年 大阪市内の動物病院の開業業務にたずさわり、院長として勤務

2024年 オンラインどうぶつ病院Talkvets立ち上げ

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