獣医さんのコラム(330)獣医さんが解説するエリザベスカラーの話

もくじ

1. ごあいさつ

2.獣医さんが解説するエリザベスカラーの話

  ・獣医さんはカラーをしてというけれど?

  ・カラーの種類

  ・絶対にハードカラーをしてほしい場合とは?

3.最後に

ごあいさつ

こんにちは。

オンラインどうぶつ病院Talkvets獣医師の前田です。

病院でお話ししていると、エリザベスカラーに抵抗がある方は結構な数いらっしゃるように思います。

色々な種類のカラーがあるのですが、どのカラーでもいいというわけではないので、本日はエリザベスカラーの実際についてお話ししたいと思います。

獣医さんが解説するエリザベスカラーの話

獣医さんはカラーをしてというけれど?

獣医さんは、簡単に「エリザベスカラーをしておいてください」と言ったりしますが、つける側は意外と大変ですよね。

初めてつけると嫌がって外そうと格闘してしまったり、ごはんを食べれなかったり、トイレをしようとしなかったり…

そんな様子を見て、抵抗感を持っている方も少なくないです。

ただ、目的を明確に知ってもらったり、わんちゃんやねこちゃんのカラーへの受容の過程を知ってもらうと、ただ「着けておいて」と言われるより、頑張りやすいかもしれません。

まずは、目的についてです。

主な目的は、

①傷を舐めないようにする

舐めてしまうと化膿したり、傷が開いたりと全く良いことがないです。

②点滴ラインなど、外してしまうとダメなものを保護する

点滴ラインを齧って食べてしまったりはよくあります。

③顔周りを掻いてしまうのを防ぐ

特に目はすぐに傷ついてしまったり、炎症を起こしてしまいます。

④口が出てしまうのを防ぐ

怒って口が出てしまってもお互いに怪我をしないようにする目的があります。

という用途で使用されることが多いです。

特にお家でエリザベスカラーをつけてもらうときには①、③の目的で使用することが多いです。

そして、カラーを初めてつけた時の話なのですが、

初めてカラーをつけられると、外そうとしたり、変に大人しくなったり、ごはんを食べずらかったりという様子が見られます。

ただし、大体の子は2〜3日で慣れて受け入れてくれることが多いです。(長い子でも1週間程度で受容してくれることが多いです)

もちろん、受け入れてもらうための工夫もあって、まずはお散歩のときなど一緒についていて行動を見ていれるときは外しても大丈夫です。

さらに、ごはんやお水が飲みやすいように、お皿に台をつけてもらいカラーを着けたままでも食べやすいように工夫してもらうと良いです。

そして、場合によってはカラーの種類を使い分けてもらうことも選択肢に入ってきます。

カラーの種類

カラーには何種類かあり、用途によっては使い分けることも可能です。

まず一つ目は、

ハードカラー(プラスチック製のカラー)です。

基本的に、どの用途にも使えるカラーですが、一番慣れるのに時間がかかるカラーでもあります。

大きな抵抗がなければ、ハードカラーを着けていただくのが理想的です。

ただし、注意点もあって、首が長い子達は、カラーが下がってきてしまって鼻先がカラーから出てしまうことがあります。

鼻先が出てしまうと、頑張れば口や手が届いてしまうので、サイズ選択に注意が必要です。

二つ目が、ソフトカラーです。

布など柔らかい素材で作られているカラーです。

柔らかいので受け入れやすいというところが良い点ですが、わんちゃん・ねこちゃんが本気で舐めよう、掻こうとするとできてしまうことが多いです。

治療のときに使うというよりは、日常的に掻いてしまったりという習慣的なものを防いだりという軽い目的で使うか、エリザベスウェアと併用するときなどに使ってもらうことが多いです。

三つ目が、ムーンカラーです。

首の周りにクッション状のものを巻き、首が曲がらないよう(首を曲げてお腹の傷などを舐めれないよう)にするカラーです。

部分的な傷や皮膚炎を舐めないようにするという目的で有効で、ごはんを食べたりがしやすいという利点があります。

首が短い短頭種などで使いやすいカラーですが、首の長い犬種では使えないこともあります。

四つ目は、カラーとは少し違いますがエリザベスウェアです。

お腹の傷を覆って舐めなくするというコンセプトのもので、最近は使われることも多いです。

エリザベスウェアも、本気で舐めようとすると、自分で脱いでしまう子もいるので注意が必要なことがありますが、カラーが苦手な子では選択肢の一つになります。

ざっと4つ選択肢があるのですが、注意点もあります。

獣医さんがカラーをつけてというときはハードカラー(プラスチック製のカラー)を想定していることが多いです。

ハードカラーを着けて欲しかったのに、再診のときにソフトカラーを着けていたということもよくあるで注意が必要です。

必ず確認した上で使ってもらえたらと思います。


絶対にハードカラーをしてほしい場合とは?

ハードカラーをしてほしいとお話しすると、舐めていない、気にしていないから…と難色を示されることが実は結構あります。

でも、その中でも必ずハードカラーを装着してほしい疾患もあったりします。

それが、目の疾患です。

目はすごく繊細な部分なので、気にしていないように見えても、見ていないときに一掻きでもしてしまったり、どこかにぶつけたりすると思った通りに治癒しないということがあります。

獣医さんとしては、治療に反応が乏しいかどうかの判断の分かれ目になることも多いので、掻いたかもしれないという可能性を0にするのが非常に重要です。

また、角膜は0.7mm程度の本当に薄い組織なので、掻いてしまうと容易に穴が空いてしまうこともあるほど繊細な部分です。

眼科ではエリザベスカラーは治療のキーになるアイテムなので、獣医さんがカラーをしてほしいと言った場合は必ずハードカラーをするということを忘れないでもらえたらと思います。

静脈点滴のラインなどを残してお家にお返ししているときも、万が一のときを考えて絶対にいたずらできないようハードカラーをしておいてほしい状況かもしれません。

点滴のラインを噛みちぎって飲み込んでしまったりということが非常に多かったりします。

具合が悪くて、点滴しているのにさらに異物になってしまうと非常に困った事態になることもあります。

さらに、血管にチューブが入っているので、外れてしまうと出血して「どうしよう!?」という事態になることもあります。

術後ももちろんエリザベスカラーをお願いすることが多いのですが、エリザベスウェアや服帯で代用できることも多々あるので、傷口に関しては舐めれないことが確保できればOKと言えるかもしれません。

ただし、整形外科の術後は少し状況が違います。

術後にギブスを着けていることが多いからです。整形外科の手術の場合は手術で人工物を入れて骨を留めていることも多いので骨が固まるまでの間の強度を補助する重要な役割がありますし、何かの具合でギブスをいじってしまうと変に足が締め付けられてしまったりと事故のもとです。

また、お腹の術創のように洋服で保護できる場所でもないため、口が届かないようにハードカラーをつけておいてもらう必要があります。

最後に

たかがカラーですが、されどカラーとも言えるのが、このエリザベスカラーです。

ちょっと抵抗があっても、まずは2〜3日は我慢してもらえると、治療の幅が広がるので、ぜひトライしてくださいね。

それでは、また次回のコラムでお会いしましょう!

執筆者

2010年 北里大学獣医学部卒業

大阪、東北の動物病院を経て、

2015年~2016年 北里大学附属小動物医療センター研修医

2016年~2024年 大阪市内の動物病院の開業業務にたずさわり、院長として勤務

2024年 オンラインどうぶつ病院Talkvets立ち上げ

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