もくじ
1. ごあいさつ
2.整腸剤とは?
4.最後に
ごあいさつ
こんにちは。
オンラインどうぶつ病院Talkvets獣医師の前田です。
長々と続いていたお腹シリーズもいよいよ最後のテーマをおおくりしようと思います。
お家で病院に行こうか微妙な時ってよくありますようね。そういう時によく相談されるのが、お家にある整腸剤を飲ませてもいいですか?という話です。
これで最後にしようと思っていたのですが、書くことが多すぎて前編、後編に分かれてしまいました。
ちょっと長いですが、ぜひお付き合いください
整腸剤とは?
腸の細菌に働きかけてバランスを整えてくれるのが整腸剤の役割です。
動物病院では、動物用の製品を使うこともありますが、人用医薬品のビオフェルミンやミヤBMなども一般的に使われています。
ですので、お家にある整腸剤を飲ませてもいい?と言われると、ビオフェルミンとか強ミヤリサンとかであればとお伝えしていることが多いです。
整腸剤はたくさん種類があるので、他の整腸剤は成分がわからないのでやめておいてくださいとお話ししていることもあります。(注:獣医さんでも色々な意見があるので参考程度に)
あと、一つ気をつけてほしいのが、抗生剤と一緒に使う時です。
菌の種類によっては、抗生剤で一緒に殺菌/静菌されてしまって効果が出ないので抗生剤耐性の菌を用いた整腸剤を使う必要があります。
どれくらいあげればいいの?
さて、整腸剤をあげるとすると、今度はどれくらいあげればいいの?ということが気になると思います。
動物用のお薬は規定量を与えてもらえれば良いと思いますが、ビオフェルミンなど人の薬はどうでしょうか?
回答としては「ビオフェルミンは経験則で大体1袋もしくは1錠を1回分としてお伝えしていることが多いですが、決められた分量はないです。」が正解なのですが、ここではもうちょっと詳しく考えてみようと思います。
論文上では犬由来のビフィズス菌(ビフィズス菌には色々種類があるのですがここでは一括りでビフィズス菌とします)を健康なわんちゃんに使う時の推奨量は、1×10⁷CFU~となっています。
そして、1×10⁸CFUや1×109CFUと量を増やすと効果も増す可能性が示唆されています。1)
このCFUというのは菌から生えるコロニーの数を表す単位で、一般的に薬の裏に書かれているビフィズス菌○mgという単位に直すと、ビオフェルミンR散1gが1.1×109CFU/g(1g中にビフィズス菌12mg) 2)という記述を参考にさせていただくと、0.01g(1.1×10⁷CFU)~1g(1.1×109 CFU)は使用可能範囲ではないかと推測されます。
ただし、ポイントは論文は犬由来の乳酸菌を健康な犬に使用しているデータであって、実際には、お腹の状態の悪いわんちゃんに使っていて、ビオフェルミンが人由来の乳酸菌であるということかなと思います。
つまり、犬由来のものを使うより定着が悪く、健康なわんちゃんに使うときより強い効果が必要と考えられます。
よって、薬の量は多めが良いのではないかと思います。
それをもとに適正量を考えると、散剤だと多めに一袋(1g)、錠剤だと1錠(1錠で散剤と同じ量のビフィズス菌が配合されている)を処方するというところになるのではないかと思います。
ちなみに、市販のビオフェルミンは乳酸菌の配合量が少ないのですが、その分他の菌も入っているので、2倍量程度の内服量と考えてもいいのかなと推測しています。
1)Russ K etal: Effects of Varying Doses of a Probiotic Supplement Fed to Healthy Dogs Undergoing Kenneling Stress
2) 今村陽子:ビオフェルミンR散中に存在する耐性乳酸菌培養法の検討
最後に
動物病院では人の整腸剤がよく使われます。
それは、動物用のものは価格が高いことと、その割には犬由来や猫由来の菌ではないこと、多めに内服してもらおうと思ったときにさらに費用が高くなってしまうということが原因ではないかと思います。
適応外使用になるので本来は動物用のものの方がいいですが、そんなこんなで私も人用を使っていました。
今は腸内細菌ブームなのでもしかしたらそのうち安価で犬由来の整腸剤が出てくるのでは!?と期待しています。
次回の後編は製品について少し説明しようかなと思っています。
ではまた、次のコラムで!