
もくじ
1. ごあいさつ
3.最後に
ごあいさつ

こんにちは。
オンラインどうぶつ病院Talkvets獣医師の前田です。
歯周病シリーズもとうとう最終回!
長々とお付き合いありがとうございました。
最後に歯周病が他の病気の原因になるというお話で締めくくりをしたいと思っています。
最後までお付き合いいただけると幸いです。
歯周病ってわんちゃんでも他の病気の原因になる?

人での問題になっている歯周病が引き起こす病気って?
人では歯周病菌が血管に入り込むことで血管で炎症が起こり、粥状の脂肪沈着物が蓄積することで血管壁が歩くなり動脈硬化がおこります。
動脈硬化はさらに脳梗塞や心筋梗塞などを引き起こすことでも知られています。
それ以外にも、糖尿病や早産や低体重児出産、骨粗鬆症など歯周病が様々な疾患を起こします。
わんちゃんでも歯周病は度々問題になりますが、わんちゃんの場合はどうでしょうか?
わんちゃんの歯周病は心臓病を引き起こす?
実は、わんちゃんの歯周病関連疾患はわかっていない=証明されていないことが多いです。
ただし、いくつかわかっていることもあって、
まず、脳梗塞や心筋梗塞の原因にもなる動脈硬化症はわんちゃんの場合はあまり発生しないことがわかっています。
一説には、HDLコレステロールとLDLコレステロールの割合が人と違うために起こりづらいのではないかと言われています。
一方で、歯周病との関連が証明されている病気もあります。
それは心臓病です。
歯周病を持っているわんちゃんたちで心臓病を患う数が増えることは複数の研究で証明されていて、歯周病が心臓病リスクが上げることは共通認識となっています。
わんちゃんの歯周病とその他の病気
わんちゃんの歯周病関連疾患に関しては、心臓病以外は今のところ見解が分かれています。
動脈硬化の発生率が低いので脳梗塞や心筋梗塞に関しては歯周病に関連して発生することはあまりないのではと推測されます。
他に、証明されていないとはいえ理論的なものや経験的なもので関連しているだろうと予想されるものもあります。
一つ目は、早産や低体重児です。
人では歯周病菌が血中に入り込むことでつくられる炎症性物質の濃度と早産や低体重児の出産率が相関していることがわかっており、羊水の中から歯周病菌が検出された例もあるようです。
証明はされていないものの、歯周病菌が血中に入ることはわんちゃんでも起こりえるので、早産や低体重児に関してはわんちゃんでも十分あり得るのではないかと思います。
二つ目は糖尿病です。
歯周病が、わんちゃんにも共通して存在するインターロイキン6(IL-6)、腫瘍壊死因子(TNF)、C反応性タンパク(CRP)などの炎症性化学伝達物質を増加させ、それがインスリンの抵抗性を上げることがわかっています。
ちなみに、わんちゃんでも歯周病の治療によってインスリンでのコントロールが可能になったことが報告されているので、歯周病が糖尿病を誘発するという直接の証拠はないですが、関連している可能性は大いにありそうです。
他にも、実際に経験したのが肝数値の上昇です。
わんちゃんでは、原因の特定できない肝数値の上昇ということがよくあります。
肝数値が高くて経過を見ている間にスケーリングをしたことで劇的に数値が下がったという症例を何例か経験しており、人では歯周病の治療後に肝数値の改善したという報告があるので、わんちゃんでも同じように関連があると思っています。
参考資料:Alessandro De Simoi、Systemic implications of periodontal disease
最後に
最終回はいかがでしたでしょうか?
わんちゃんではまだまだわかっていないことも多いので、歯周病についても今から新しいことが発見されていくのではないかと思います。
わからないことも多いですが、健康は歯からというのは間違いないと思います!
是非、お口の健康を維持していってあげてくださいね。
それでは、また次回のコラムでお会いしましょう!

執筆者
2010年 北里大学獣医学部卒業
大阪、東北の動物病院を経て、
2015年~2016年 北里大学附属小動物医療センター研修医
2016年~2024年 大阪市内の動物病院の開業業務にたずさわり、院長として勤務
2024年 オンラインどうぶつ病院Talkvets立ち上げ