獣医さんのコラム(88)獣医さんが解説する致死率の高い危険な中毒

もくじ

1. ごあいさつ

2.獣医さんが解説する致死率の高い危険な中毒

 不凍(エチレングリコール)

 ユリ

 ティーツリーオイル

 育毛剤(ミノキシジル)

3.最後に

ごあいさつ

こんにちは。

オンラインどうぶつ病院Talkvets獣医師の前田です。

わんちゃんやねこちゃんは、人とは代謝できるものが違うので中毒を起こすものが意外と多いです。

本当に致命的なものから比較的症状が軽くすむものまで様々あります。

今日はその中でも、致命的になりやすい中毒物質をまとめてみました。

獣医さんが解説する致死率の高い危険な中毒

不凍液(エチレングリコール)

不凍液の成分であるエチレングリコールは、甘い味がするので誤食しやすいと言われています。

昔は、保冷剤にエチレングリコールが使われていましたが、危険性が指摘されたため、現在国内では無害なプロピレングリコールなどにかわっていますが、海外の製品には含まれている可能性があります。

エチレングリコールを摂取すると、摂取後30分~12時間で嘔吐や多飲多尿、沈うつ、ふらつきなどの症状が発現し、わんちゃんで36~72時間、ねこちゃんで12~24時間で急性腎不全を起こし、おしっこがつくれなくなり死にいたります。

致死量は、1kgの体重あたりわんちゃんで4.4~6.6ml、ねこちゃんで1.4mlとねこちゃんでより危険な中毒です。

ユリ

ユリはねこちゃんにとって致命的な中毒物質です。

ねこちゃんが中毒を起こすと、よだれ、嘔吐、ふらつき、食欲不振、沈うつ、多尿性急性腎不全を起こし、最終的にはおしっこがつくれなくなります。

正確な毒性量や腎不全を起こす中毒成分など詳しいことはわかっていませんが、花びらだけではなく花弁、雄しべ、葉、花粉など全てで中毒を起こすことがわかっており、葉っぱを2 枚程度や 1 つの花の一部を口にしただけで死にいたることがあります。

ティーツリーオイル

昨日アロマのコラムでも紹介したように、抗菌や抗ウイルス作用があって動物の医療でも使われているティーツリーオイルはわんちゃん、ねこちゃんで致死的な中毒を起こす可能性があります。

間違って摂取すると、低体温、心拍数の低下、歩行困難、ふるえ、脱力などの症状があらわれます。

とくに、濃度100%のエッセンシャルオイルが危険で、致死量は1kgの体重あたり1.9~2.6mlと言われています。

育毛剤(ミノキシジル)

育毛剤の成分として注目されているミノキシジルという成分が、わんちゃんやねこちゃんにとって有害であることが最近になってわかってきました。

とくに、お家で育毛剤を使ったときにとんでしまった滴を口にしたり、枕についた育毛剤を舐めてしまったりといった少量の摂取で中毒になり、嘔吐、よだれ、沈うつ、呼吸困難、血圧の低下、頻拍などを起こし、重症の場合は虚脱や発作を起こします。

過去に中毒を起こしたわんちゃんやねこちゃんを研究したところ、症状がでた子のほとんどが中等度または重度の症状で(犬56.0%、猫59.7%)、猫62匹中8匹(12.9%)が死亡したというデータが出ています。

Kathy C. Tater, Topical Minoxidil Exposures and Toxicoses in Dogs and Cats: 211 Cases (2001-2019)

最後に

軽度な中毒は治療をすれば元通りということもありますが、致命的な中毒は奇跡的に助かったとしても重い腎不全などの後遺症が残る可能性が高いです。

忘れていたけど、うちにも実はあった!ということもよくなるので、お家の中を再度チェックしてみてくださいね!

それでは、また次回のコラムでお会いしましょう!

執筆者

2010年 北里大学獣医学部卒業

大阪、東北の動物病院を経て、

2015年~2016年 北里大学附属小動物医療センター研修医

2016年~2024年 大阪市内の動物病院の開業業務にたずさわり、院長として勤務

2024年 オンラインどうぶつ病院Talkvets立ち上げ

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