
もくじ
1. ごあいさつ
3.最後に
ごあいさつ

こんにちは。
オンラインどうぶつ病院Talkvets獣医師の前田です。
前回、わんちゃんの心雑音についてをおおくりしましたが、実はねこちゃんの心雑音はさらに特徴があって難しいところがあります。
今日はわんちゃん編に続きねこちゃん編もおおくりしたいと思います。
心雑音が聞こえたら?〜ねこちゃん編〜

ねこちゃんの心雑音事情
わんちゃんは心雑音が聴こえることが心臓病を疑う一つの症状でしたが、ねこちゃんの場合は事情がだいぶ違います。
ねこちゃんでは、緊張や貧血、発熱のときにも心雑音が聴こえることがあり、一説では健康なねこちゃんのうち1/3で心雑音があるという話もあります。
こんな話があると、心雑音があっても何も当てにならない??という感じもしますが、それでも心雑音を見つけるのがとても大切です。
なぜかというと、ねこちゃんの心臓病は見つけにくいという特徴があるからです。
ねこちゃんで1番多い心臓病は、肥大型心筋症(HCM)なのですが、この病気で心雑音が聴こえる確率は半分以下(46%程度)と言われています。
有病率がねこちゃん全体の11~16%とかなり高いのも特徴です。
しかも、この肥大型心筋症は気づかないと突然、血栓症を起こしたりと厄介な病気でもあります。
つまり、心臓病になっていても気づかず悪化している可能性があるので、心雑音=心臓病ではないものの、心雑音から心臓病を見つけることが重要なのです。
ねこちゃんの雑音は聴こえた方がいい?
心雑音から肥大型心筋症を見つけることが重要という話をしましたが、この心臓病自体は治すことが難しい病気です。
ただし、早く見つけて適宜治療介入をした方がいいという一つのデータとして、
この肥大型心筋症に伴ってSAM(収縮機前方運動)という現象が起きると心雑音が聴こえるようになるのですが、実はこのSAMはヒトでは予後不良因子と言われています。
一方で、ねこちゃんではSAMがある肥大型心筋症の方がSAMがない肥大型心筋症より予後がいいというデータがあります。
つまり、SAMがあることで、心雑音から早期診断、治療が始められることが予後に関連している可能性があるのです。
子猫さんで雑音が聴こえる場合とは?
1歳以下で肥大型心筋症が疑われるというケースは実はわりと遭遇します。
ただし、先天性心疾患の割合自体は0.2~1%程度と言われていて、実際診察をしていてもわんちゃんと比べてとても少ない印象があります。
ちなみにわんちゃんでは、動脈管開存症という病気が多かったですが、ねこちゃんの場合は心室中隔欠損症(VSD)が多いです。
参考:犬猫の循環器疾患1521例の発生状況に対する調査
最後に
ねこちゃんの肥大型心筋症は初期だと診断が難しいことがあるので、
心雑音を過去に指摘されたことがあり検査しても原因がはっきりしなかったねこちゃんでも、定期的に健診を受けてもらったほうがいいと思います。
経験的に避妊去勢手術のときにグレーゾーンだった子が、その後に肥大型心筋症を発症することもよくあります。
早期発見が大切です!
それでは、また次回のコラムでお会いしましょう!

執筆者
2010年 北里大学獣医学部卒業
大阪、東北の動物病院を経て、
2015年~2016年 北里大学附属小動物医療センター研修医
2016年~2024年 大阪市内の動物病院の開業業務にたずさわり、院長として勤務
2024年 オンラインどうぶつ病院Talkvets立ち上げ