
もくじ
1. ごあいさつ
3.最後に
ごあいさつ

こんにちは。
オンラインどうぶつ病院Talkvets獣医師の前田です。
避妊手術編が終わったので、同じく男の子の手術、去勢手術についてもまとめていきたいと思います。
女の子の子宮蓄膿症みたいな病気はないのに、手術って必要なのかな?というところを獣医さんの目線で解説していきます。
ちなみに、我が家では父が手術をするのに反対して、初代や2代目のわんちゃんは手術していなかったです。
その時の話も踏まえて書いているので、参考になれば幸いです。
獣医さんが解説する去勢手術って必要なの?

・去勢手術の良いところ
女の子の子宮蓄膿症のような病気は、男の子にはないですが、男性ホルモンが原因で起こる病気があります。
①前立腺肥大
前立腺は男性ホルモンの影響を受けて徐々に大きくなってきます。
大きくなりすぎると、前立腺の上にある直腸を押し上げて排便がしづらくなってきます。
排便に影響したり、前立腺の中に嚢胞ができてきたりするようであれば去勢手術の対象になってきます。
②会陰ヘルニア
男性ホルモンの影響で、お尻の筋肉が薄くなってしまい腹圧に負けてお腹の中の臓器がお尻の方に飛び出してしまう病気です。
よく吠える犬種だったり、腹圧がかかりやすい子に多い病気です。
筋肉が薄くなってしまうと戻らないので、早めの去勢手術が予防につながります。
③肛門周囲腺腫
男性ホルモンの影響で肛門の周りに良性の腫瘍ができる病気です。
男性ホルモンが出なくなると萎縮していくことが多いですが、通常は腫瘍の摘出と去勢手術を同時に行なうことが多いです。
その他に、よくお困りごととして相談いただくのが、
お母さんの足に腰をふるといった性行動です。
正常な行動ではあるのですが、困ってしまう方が多いのとなかなかしつけでは落ち着かないので、
やっぱり困るな…という方は、性成熟を迎える前に去勢手術をした方がいいかもしれません。
上に書いた病気は、わんちゃんのお話ですが、ねこちゃんでもこの性行動は同じくあるのと、尿スプレーというなわばり行動をすることがあります。
去勢をしていないねこちゃんの尿の独特の臭いや発情の声の問題も、去勢手術で予防できます。
・去勢手術の悪いところ
避妊手術のようなお腹を開く手術ではないですが、それでも麻酔が必要なのと、出血などの手術のリスクなども考えておく必要があります。
また、術後はホルモンバランスが崩れるため太りやすくなります。
特に、ねこちゃんは肥満のリスクが高いので注意が必要です。
オスねこちゃんは、尿道閉塞が病気として多いので、
早期の去勢手術で尿道の発達が未熟になり、尿道閉塞を起こしやすくなるのでは?という話もありますが、今のところ、論文上、月齢は関係ないとされています。
・獣医さん的にした方がいい?
病気の予防としては、去勢手術はとても有効だと思います。
実際、中年以降に治療の一環として去勢手術をすることも多いです。
後は、1番問題になりやすいのは排尿やマーキングの問題と性行動の問題です。
自然な行動を去勢手術で…という意見ももちろんあると思いますが、お家で一緒に暮らす上で、一度行動記憶に残ってしまうと、去勢手術をしても完全によくならないこともあるので、十分に検討してほしいと思います。
実際に、我が家でも父の方針で去勢手術をしなかったので、初代と2代目のわんこがリビングの柱にマーキングする癖が抜けず部屋が大変なことになったことがあります。
なので、獣医さんとしても飼い主としても早めの去勢手術を私は勧めています。
最後に、わんちゃんで意外と多い睾丸が正常な位置に降りていない潜在精巣(陰睾)のわんちゃんに関しては、精巣が体温の影響を受けて、高齢犬で10%以上の確率で腫瘍化することがわかっています。
潜在精巣のわんちゃんに関しては、獣医学的に早めの去勢手術を勧めています。
最後に
結局、我が家では3代目のわんちゃんから子どもの時に去勢手術をするようになりました。
癖がついてしまうと、ずっとお付き合いしていかないといけないので、手術については、獣医さんと相談してもらいながら、ご家族でもよく話しあって決めていただければと思います。
去勢手術も潜在精巣のことや、ねこちゃんとわんちゃんだと術式が違ったりと、少し複雑なところもあるので、次回は去勢手術の実際というところも書いておこうと思います。
それでは、また次回のコラムでお会いしましょう!

執筆者
2010年 北里大学獣医学部卒業
大阪、東北の動物病院を経て、
2015年~2016年 北里大学附属小動物医療センター研修医
2016年~2024年 大阪市内の動物病院の開業業務にたずさわり、院長として勤務
2024年 オンラインどうぶつ病院Talkvets立ち上げ