
もくじ
1. ごあいさつ
3.最後に
ごあいさつ

こんにちは。
オンラインどうぶつ病院Talkvets獣医師の前田です。
実は眼科は動物病院の中でも少し特殊分野です。
眼科専門の病院なども多く、眼科に行かないと診断がつかないこともしばしばあります。
今日はそんな眼科に研修に行っていてヒヤヒヤしたエピソードや自分が治療していてヒヤッとした話などをおおくりしたいと思います。
獣医さんがお話しする眼科のちょっと怖い話

去勢手術直後に眼が見えなくなった?と騒然とした話
手術直後に何か起こると手術や麻酔のせい?と思いますよね。
獣医さんもやっぱりそれは常に念頭においています。
特に、去勢手術や避妊手術などの予防的な手術の場合は、健康な子に麻酔をかけて切ったり縫ったりするので手術で何も起こらないようにしたいというところなのですがリスクはつきものです。
術後に何か起こった時は、不測の事態が起きたのではないかと疑って調べることになると思います。
このケースは、その中でも自院で診断がつかないような眼科分野の病気だったので、なかなか原因がわからずに飼い主さんも獣医さんもヤキモキしたエピソードです。
去勢手術の後に急に目が見えなくなったというケースだったのですが、
結果的にはこのわんちゃんは去勢手術後にたまたま遺伝的に失明する進行性網膜萎縮症(PRA)を発症し盲目になってしまったことがわかりました。
PRAは夜盲から始まって、次第に昼も見えなくなる網膜の病気で、眼底検査で網膜の状態を評価することで診断をする病気です。
手術前も電気を消した部屋に入りたがらないや夜はものにぶつかるといった症状が隠れていたのかもしれませんが、片目の視力喪失や夜盲は気づかないことが多いので完全に視力を失う前に発見するのは困難なことが多いです。
なんにせよ、毎日するような手術でもしっかりリスクの話をして、何かあったときは色々な可能性をお伝えできるようにしないといけないなと思ったケースでした。
実際のところ、手術のせいじゃないかと怒りをかかえて眼科に来られていたので見ている私もヒヤヒヤしたケースでした。
耳が痒かっただけなのに眼が見えなくなった話
病院で診察していると外耳炎はよくある病気です。
頻繁に繰り返しているわんちゃんにもよく出会うのですが、耳が悪かったはずが眼にも影響を与えるかもしれないよというお話をしたいと思います。
眼の奥には網膜という場所があって、目から入る情報を脳に伝えるために必須の場所です。
そんな網膜が剥がれてしまう病気が網膜剥離です。
この網膜剥離に関しては、手術ができる病院がほんの一部だけなので全域で剥がれると視力を失ってしまうことが多い怖い病気です。
そして、耳が痒くて慢性的に頭を振るわんちゃんやおもちゃを咥えて激しく顔を振る癖のあるわんちゃんは網膜剥離を起こしやすい傾向あります。
人間でいうと、ボクシングなどのスポーツで網膜剥離を起こすと聞いたことがあるかもしれませんが、わんちゃんにも同じことが起こる可能性があるのです。
外耳炎といえど侮らないでしっかり治してあげてくださいね!
眼を溶かす?細菌って怖いという話
細菌は皮膚や口、もちろん眼の表面にも常在している微生物です。
普段は何も悪さはしないのですが、傷ができて感染が成立すると大変なことを起こすこともあります。
その一つが眼の表面の角膜です。
わんちゃんは、頭から突っ込んでいったりするので目に傷をつくるのはよくあることです。
目を傷つけた場合は、必ず抗生剤の点眼薬を使いますが、このケースはたまたま抗生剤が効かない細菌(耐性菌)が感染してしまったというお話です。
治療が合わなくて良くならない、悪化するとういうことはままあることです。
でも眼科に関しては、あっという間に取り返しがつかなくなることがあります。
この時も、若いフレンチブルドッグのわんちゃんの目の傷だったのでいつも通り抗生剤の点眼や保護剤、エリザベスカラーなどルーチンのものを処方しました。
3日後に再診にしたと思うのですが、次に受診してもらったときには傷がかなり拡大していました汗汗
耐性菌が感染していたせいで、処方した抗生剤では抑えられず細菌が傷の周りの角膜も溶かしてしまって眼に穴を作っていました。。
幸いにも、眼の中まで貫通していませんでしたが危ないところでした。
抗生剤を変更して必死に進行を止めて治りましたが、もう1日遅かったら貫通していたと思います。
耐性菌が感染しているかは傷ができた時には判断できないので、順調に治るかヒヤヒヤします。
細菌の種類によっては1日2日で穴が開いてしまうこともあります。
とはいえ、機械的に抗生剤を何種類も処方するとそれも耐性菌をつくりだすことにもなるので難しいところです。
ちょっとヒヤヒヤしたエピソードです。
最後に
病気の治療をしていると、相手が生き物なので時には想像を超えたことが起こるものです。
飼い主さんから電話をいただくと何か起きたのかなとドキドキするのは獣医さんあるあるかもしれませんね。
それでは、また次回のコラムでお会いしましょう!

執筆者
2010年 北里大学獣医学部卒業
大阪、東北の動物病院を経て、
2015年~2016年 北里大学附属小動物医療センター研修医
2016年~2024年 大阪市内の動物病院の開業業務にたずさわり、院長として勤務
2024年 オンラインどうぶつ病院Talkvets立ち上げ