獣医さんのコラム(155)獣医さんが解説する去勢手術をした方が良いタイミングって?

もくじ

1. ごあいさつ

2.獣医さんが解説する去勢手術をした方が良いタイミングって?

  子供のころの去勢手術をするタイミング

  次に手術を考えるべき場合

  ・精巣自体が問題で手術が勧められるケース

 

 

3.最後に

ごあいさつ

こんにちは。

オンラインどうぶつ病院Talkvets獣医師の前田です。

昨日は避妊手術のタイミングの話をしましたが、本日はその続きの去勢手術編をおおくりしたいと思います。

ねこちゃんの話も盛り込んでお話ししようと思いますので参考になれば幸いです。

獣医さんが解説する去勢手術をした方が良いタイミングって?

子供のころの去勢手術をするタイミング

去勢手術も子どもさんの頃に病院で勧められる手術です。

女の子の場合は、病気の予防のために時期が重要でしたが、男の子に関しては病気予防のデータがあるという訳ではありません。

一緒に暮らしていく上での習慣としてマーキングなどの癖がつかないうちに手術をしてもらうというのが時期の目安になってくると思います。

わんちゃんの場合は、足をあげておしっこをしだすのが一つの目安です。

足をあげ出す=マーキングというわけではありませんが、性成熟の過程の一つなのでわかりやすいということが大きいと思います。

ねこちゃんの場合は、少し行動での判断が難しいですが、大体6ヶ月齢前後に手術をしていることが多いです。

このマーキングに関しては、癖がついた後に手術をしても習慣として残ってしまうことがあるので、マーキングされるのは困る…という方は計画的に手術を検討していただければと思います。

とくに、オス猫さんの場合は、未去勢だとおしっこの臭いがきつくなったり、発情を迎えると鳴き声が問題になったり、女の子を求めてお外に出てしまったりということも多いので、より慎重に検討してもらった方が良いと思います。

次に手術を考えるべき場合

去勢手術も抵抗がある方が多い手術の一つで、子どものころに選択されない方もいらっしゃいます。

ただ、お年をとっていくうちに病気に関連して手術をしないといけないケースもあります。

特に、男の子の場合は男性ホルモンが原因で起こる病気があり、その病気を疑う場合は手術が必要になります。

(男性ホルモン関連の病気は主にわんちゃんの病気なので、ねこちゃんの場合は少し事情が異なりますのでご注意ください。)

①前立腺肥大

前立腺というのは膀胱の根本(尻尾に近い部分)にある生殖器の一つです。

人間でも前立腺肥大という病名はよく聞くかもしれませんが、わんちゃんでも男性ホルモンの影響を受けて年々前立腺が大きくなってきます。

前立腺が大きくなりすぎて、直腸を持ち上げてしまい排便がしづらくなってしまったり、前立腺の中に嚢胞ができてしまったりと何か問題が起き出したら、去勢手術の対象になってきます。

②会陰ヘルニア

オスのわんちゃんでは、お尻の筋肉と筋肉の間からお腹の中のものが出てしまって膨らんできてしまう会陰ヘルニアという病気があります。

時には膀胱などがお尻の方に出てしまうこともあるのですが、この原因となっているのが男性ホルモンで、ホルモンの影響でお尻の筋肉が薄くなってしまい、腹圧に耐えられなくなることでヘルニアが起こります。

もちろん、整復のための手術も必要なのですが、同時に男性ホルモンをカットするために去勢手術も行います。

③肛門腺腫

肛門にベリー状のできものができる肛門腺腫という病気も男性ホルモンが影響していることがわかっています。

できもの自体は良性なのですが、出血したりといった症状が出ることがあります。

こういった腫瘍を疑う場合も去勢手術が適応されます。

去勢手術だけでも、腺腫が縮んでくることが期待されますが、通常は摘出と去勢手術を一緒にすることが多いです。

精巣自体が問題で手術が勧められるケース

精巣自体が問題になって手術が勧められるケースもあります。

一つは、わんちゃんとねこちゃん共通で精巣が正常な位置にない場合です。

これは、もともと精巣がお腹の中にあり、適切な時期に鼠径を通って降りてくるはずが降りてこなかったという状態で潜在精巣(陰睾)と呼ばれています。

正常な位置に精巣がないと、体温などの影響を受け正常な働きができないばかりか、精巣腫瘍になる確率が約10倍程度と報告されています。

そのため、マーキング癖などとは別の意味でなるべく早くに手術をすることを勧められます。

二つ目は、精巣自体が腫瘍化した場合です。

これは、ねこちゃんというよりはわんちゃんで多い病気ですが、精巣腫瘍になるわんちゃんは意外と多いです。

転移率は低いですが、見つけたら手術をして摘出するのが基本になってきます。

最後に

意外と、男性ホルモンが影響する病気が多いので未去勢の子でも中年齢ぐらいで去勢を勧められることはよくあります。

お父さんなど、去勢に抵抗がある方も割といらっしゃるので病気のことも踏まえて、お迎えするときによく話しあってもらえたらと思います。

それでは、また次回のコラムでお会いしましょう!

執筆者

2010年 北里大学獣医学部卒業

大阪、東北の動物病院を経て、

2015年~2016年 北里大学附属小動物医療センター研修医

2016年~2024年 大阪市内の動物病院の開業業務にたずさわり、院長として勤務

2024年 オンラインどうぶつ病院Talkvets立ち上げ

当サービスのご利用にあたって

オンライン相談では、

診断をつけたり、

お薬を処方することは

できません。

動物たちのより良い生活や

より良い医療のための

サービスであることを

ご理解ください。

サービスのご案内 service
獣医師紹介 doctor
サービスのご案内 service
獣医師紹介 doctor