
もくじ
1. ごあいさつ
2.獣医さんが解説するペットに噛まれただけで死ぬこともあるってホント?
3.最後に
ごあいさつ

こんにちは。
オンラインどうぶつ病院Talkvets獣医師の前田です。
今週は人と動物の間でうつる病気をコラムの話題にしていますが、今日はTV番組などでキャッチーに扱われることが多いこの話をしてみたいと思います。
怖いからこそ正しく知っておきましょう。
獣医さんが解説するペットに噛まれただけで死ぬこともあるってホント?

TVやネットで言われていること
みなさんは、ペットに噛まれた後に急に具合が悪くなって亡くなってしまったという話をTVなどでみたことはないでしょうか?
よく聞くのは、わんちゃんの口の中に危ない細菌がいるという話かなと思うのですがどうでしょうか?
私も職業柄、わんちゃんやねこちゃん関係のTV番組が流れているとついついチェックしてしまうのですが、海外のドキュメンタリーを紹介するようなバラエティーで見た記憶があります。
それって本当?
さて、それが本当かどうかということなのですが、結論から言うと本当です。
その病気とはカプノサイトファーガ感染症といいます。
わんちゃんやねこちゃんの口の中にいるカプノサイトファーガという細菌が、噛まれることや唾液を介して傷口から入ってくることで感染する病気です。
この病気の特徴が、急速に深刻な敗血症に進行することです。
つまり、噛まれたり、傷口から細菌が侵入した後、24時間以内に急速に悪化することのある感染症で、約25~30%が死亡すると言われています。
ただし、知っていてほしいのが日本のある調査で、国内の犬の74%、猫の57%の唾液中にこの細菌のDNAが検出されたというデータがあるにもかかわらず、国内で実際に発症している件数はさほど多くありません。
私たち動物病院関係者を含め、日常的に動物に噛まれる可能性のある人がいても実際に感染が成立するケースは少ない、つまりしっかりした免疫があって、適切な管理(すぐに洗浄して傷のケアをすること)をすればほとんどの場合は問題ないということです。
ただし、気をつけなければいけない人もいます。
獣医さん的に気をつけるべきシュチエーションとは?
一番気をつけないといけないのは、免疫力が低下している人です。
特に、糖尿病を持病として持っている人、抗がん剤で治療中の人、ステロイドや免疫抑制剤を使用している人です。
あとは、脾臓(免疫に関連している臓器)を摘出した人は通常の死亡率が約25~30%のところが50~70%に達するという報告もあるくらい免疫力、つまり抵抗力が重要な要素なのです。
免疫力の弱い赤ちゃんや高齢者はもちろん、健康な人でも他の病気になったときなど明らかに身体が弱っているというときは、いつもそばにいるわんちゃんやねこちゃんが感染源になってしまう可能性があることを心のどこかに留めておいていただければと思います。
最後に
わんちゃん、ねこちゃんも家族の一人という気持ちでいてほしいというのが獣医さんとしてよく思いますが、同時に人間とは違う生き物であるということも忘れないようにしてほしいなとも思っています。
普段から常にというのは難しいと思いますが、人の方が病気になったときなどはこういったことを思い出してぜひ気を付けていただけたらと思います。
ポイントを押さえて幸せなペットライフを!
それでは、また次回のコラムでお会いしましょう!

執筆者
2010年 北里大学獣医学部卒業
大阪、東北の動物病院を経て、
2015年~2016年 北里大学附属小動物医療センター研修医
2016年~2024年 大阪市内の動物病院の開業業務にたずさわり、院長として勤務
2024年 オンラインどうぶつ病院Talkvets立ち上げ