
もくじ
1. ごあいさつ
3.最後に
ごあいさつ

こんにちは。
オンラインどうぶつ病院Talkvets獣医師の前田です。
クリスマス、年末の足音が聞こえてくるバタバタの頃に、何だかねこちゃんがずっとトイレを行ったり来たりしていて…これは実はよく聞く話です。
今日はそんな症状を起こすねこちゃんの冬の病気を解説したいと思います。
獣医さんが解説する冬に増える猫ちゃんの『膀胱炎』って?

猫ちゃんの冬の病気といえばこれ!
冬の病気といえば色々あるのですが、ねこちゃんでいえば『膀胱炎』は代表的な病気です。
でも、膀胱炎ってどんなの…?と思う方もいらっしゃると思います。
ねこちゃんの膀胱炎とはその名の通り何らかの原因で膀胱に炎症を起こした状態のことで、頻尿(おしっこをしたはずなのに残尿感があってまたトイレに行くことを繰り返す)、自分の意図とは違う場所でおしっこを漏らしてしまったり、血尿、排尿痛といった症状を出します。
膀胱炎になると、ずっとトイレをうろうろしてちゃんと寝むれずにソワソワ…地味ですがかなり本人にもツラい症状が続きます。
ではなぜ、ねこちゃんの冬の病気と言われているかというと、猫は元々砂漠が原産の動物さんのため、あまり水を飲まないという性質があります。
そして、冬になって寒くなるとその特徴がより顕著に現れ、飲水量が減る動物でもあります。
すると、おしっこが濃く濃縮し、トイレの回数も減ってしまいます。
このことが、膀胱壁への刺激になり炎症を起こしやすくなったり、おしっこが濃縮することで尿結晶や尿石が析出しやすくなるのです。
ちなみに、膀胱炎もかわいそうですが膀胱炎がきっかけで特にオスのねこちゃんは尿道が詰まって尿閉塞になることもあり、そうなるとさらに深刻なことになります。
膀胱炎の種類
実はねこちゃんは膀胱炎を起こしやすいちょっと特異な性質を持っている動物でもあります。
ねこちゃんの膀胱炎で一番多いものは、特発性膀胱炎と言われている種類のもので実に約7割を占めると言われています。
この膀胱炎は、細菌など外的な要因によって起こるものではなく、ストレス性で炎症が起こるという特徴があります。
つまり、ねこちゃんはストレスが膀胱炎として出やすい動物さんであり、飲水量の減少などといった要因がさらにその炎症の発生の後押しをしてしまう動物なのです。
さらにいうと、ねこちゃんの男の子は尿道が狭くて短いので尿結晶が詰まることもありますが、炎症で増えたタンパク質の成分や血液、粘液などがプラグ(栓子)になって閉塞した患者さんにもよく遭遇します。
閉塞状態が何日も続くとそれが原因で亡くなってしまうこともあるので、たかが膀胱炎と思うなかれといった怖い病気なのです。
治療法、予防法
まず、膀胱炎に対する治療なのですが、特発性膀胱炎に関しては現在のところ薬はありません。
つまり、薬を使っても使わなくても症状が落ち着くのに1週間程度かかります。
実際には、顕微鏡などを使って尿の状態をモニターしていると完全に元に戻るのに1ヶ月近くかかる子も多いです。
逆に細菌性などが原因だと抗生剤を適切に使うと1〜2日で症状が治ってくるということもよくあります。
そして尿結晶、尿石が原因の場合は、治療の一環として食事療法をするのが一般的です。(食事で溶解する尿結晶/尿石と溶解しないものがありますが、膀胱炎で出てくることが多いのは溶解するタイプが多いです)
では、どうやって防げばいいのか?ということなのですが、
まず、冬にしてほしいのが飲水量を増やす工夫です。
寒いとどうしても温かいところにこもってしまってお水を飲まない子が多いので、あえてドライフードではなくウェットフード(缶詰)にして摂取水分量を増やしたりも有効です。
ささみなどの茹で汁を好む子もいますし、そもそも冷たいお水が嫌でぬるま湯だと飲んでくれるという子もいます。
好みに合わせて試してみていただければと思います。
あとは、ねこちゃんの中には体質的に他の子より膀胱炎になりやすい子も存在します。
そういった性質だとすでにわかっている場合は、ストレス緩和成分の含まれた尿管理用の療法食をお勧めします。
特発性膀胱炎には薬は効きませんが、ストレス緩和物質は発症予防になることがわかっているので使ってみる価値ありだと思います。
さらに、療法食を使うのであればあえて飲水量が増えるような設計にしているごはんもあるので、試してみるといいかもしれません。
以前は、塩分を添加することで飲水量を増やす設計のものが主流で、腎臓への負荷の問題で予防的には薦めずらかったのですが、最近は塩分ではなく他の物質を添加して腎臓に配慮した設計のものも出てきているので、ぜひ一度かかりつけの獣医さんに相談してみてもらえたらと思います。
最後に
膀胱炎って意外と、軽くみられがちな病気の一つかなと思います。
でも、重めの特発性膀胱炎になると考えを改めざるえないぐらい可哀想な病気です。
ぜひ予防策を取ってあげてもらえたらと思います。
それでは、また次回のコラムでお会いしましょう!

執筆者
2010年 北里大学獣医学部卒業
大阪、東北の動物病院を経て、
2015年~2016年 北里大学附属小動物医療センター研修医
2016年~2024年 大阪市内の動物病院の開業業務にたずさわり、院長として勤務
2024年 オンラインどうぶつ病院Talkvets立ち上げ