獣医さんのコラム(278)獣医さんが解説する筋肉が痩せてくる犬の病気3選

もくじ

1. ごあいさつ

2.獣医さんが解説する筋肉が痩せてくる犬の病気3選

  筋肉が痩せるってどういうこと?柴犬

  前十字靭帯断裂

  椎間板ヘルニア

  クッシング症候群

 

3.最後に

ごあいさつ

こんにちは。

オンラインどうぶつ病院Talkvets獣医師の前田です。

今日はわんちゃんの筋肉の話をしたいと思います。

わんちゃんと暮らしていて、普段、筋肉を意識することはそんなに多くはないかもしれませんが、実は獣医さんのチェック項目の一つに筋肉量などは上がってきます。

獣医さんが解説する筋肉が痩せてくる犬の病気3選

筋肉が痩せるってどういうこと?

普段はあまり意識されない部分かもしれませんが、筋肉量は意外と大切な要素です。

特に重要なのは、左右差です。

お家で見るなら、お散歩中の後ろ姿を見るわかりやすいかもしれませんが、見た目や触って左右差が明らかな場合は何かしらの疾患を抱えていることが予想されます。

あとは筋肉量が落ちてしまうと、元々持病として持っている整形疾患の症状が出てくるというようなこともあったりして、意外と筋肉はわんちゃんでも重要だったりします。

前十字靭帯断裂

足の筋肉量に差が出る病気の一つが整形疾患です。

特にわかりやすく、日常の動き方に影響が出るのが後ろ足の筋肉です。

後ろ足で特に左右差が出やすい整形疾患として、今回は前十字靭帯断裂をご紹介したいと思います。

前十字靭帯は膝の中にある靭帯の一つで、わんちゃんの足の構造上、前十字靭帯が損傷しやすいという特徴があります。

体重が軽い子であれば完全に断裂しても手術なしで歩けるようになることもあるのですが、靭帯が切れているとやっぱり足の機能は下がってしまいます。

結果として、ちゃんと歩けているように見えていても逆側をうまく使って運動を補っているという場合もあり、そうなるとケガをした方の筋肉は痩せてくることになります。

整形疾患の場合は、筋肉量に左右差があると、負荷のかかっている方の足をいかにケアするかや、全体的な負担を軽くするために医療的な減量などを考えていく必要が出てきます。

椎間板ヘルニア

もう1つ、筋肉量が如実に落ちてしまうものが神経疾患です。

実は筋肉は神経からの刺激を常に受けることで維持されており、そのほかにも運動神経からは神経栄養因子という栄養シグナルを受け取っています。

神経からの刺激が減ると、筋収縮が減ったり、タンパクの合成が減り、結果、その筋肉は使われていない筋肉と体が認識して痩せてきてしまいます。

また、神経栄養因子が送られないとタンパク質の分解が起こり筋肉が小さくなっていきます。

つまり、神経の病気があると急速に筋肉が痩せてきて、さらに動かしづらくなり、動かしづらくなると筋肉は廃用性萎縮といってさらに萎縮してくるという現象が起きてくるわけです。

わんちゃんで、そういった神経性の筋萎縮が起こる典型的でわかりやすい病気が、胸腰部の椎間板ヘルニアです。

胸腰部の椎間板ヘルニアは、椎間板物質が神経が通る穴の方に飛び出し脊髄神経を圧迫して阻害する病気なので、圧迫している椎間板物質がどちらか片方に寄っている場合は、その側の後足の筋肉だけが顕著に萎縮してきたりします。

椎間板ヘルニアは軽症だと内科療法だけ歩けるようになることも多いですが、圧迫の度合いに寄って筋肉が痩せてきてしまうということもあるので、その後の筋肉の状態も注意してもらえたらと思います。

クッシング症候群

最後に、神経でも整形でもなく、しかも筋肉が両側性に痩せてくる病気をご紹介したいと思います。

その病気はクッシング症候群というホルモンの病気です。

クッシング症候群は身体の中で作っている内因性のステロイドが増えすぎる病気で、ステロイドが増えることで筋肉が作られづらくなり、さらに今ある筋肉も分解する方向に働きます。

その結果として全身の筋肉が痩せてきてしまい、後ろ足の筋肉も細くなって骨ばってきますし、お腹の筋肉も薄くなって内臓の重みでお腹がポコっと出るポットベリーという体型になってきます。

この典型的な筋肉の痩せ方でクッシング症候群を疑うということも少なくないです。

ちなみに、筋肉増強のためにステロイドを使うということを聞いたことがあるかもしれませんが、このステロイドとクッシング症候群で増加するステロイドは別のもので、筋肉を増強するのはテストステロンというステロイドホルモンの1種です。

ちなみに病院で処方される薬のステロイドはクッシング症候群で増加するステロイドと同じ系統のものなので、長期間使用すると同じく筋肉が痩せてくるという作用が現れる場合があります。

最後に

筋肉は基本的に、比較的長い期間をもって痩せてくるものなので、意外と変化に気づかなかったりということも多かったりします。

改めて足やお腹など触ってみてもらうと良いかもしれません!

それでは、また次回のコラムでお会いしましょう!

執筆者

2010年 北里大学獣医学部卒業

大阪、東北の動物病院を経て、

2015年~2016年 北里大学附属小動物医療センター研修医

2016年~2024年 大阪市内の動物病院の開業業務にたずさわり、院長として勤務

2024年 オンラインどうぶつ病院Talkvets立ち上げ

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