獣医さんのコラム(279)獣医さんが解説する慢性腎不全の数値の秘密

もくじ

1. ごあいさつ

2.獣医さんが解説する慢性腎不全の数値の秘密

  腎臓の数値は判断が難しい柴犬

   BUN(尿素窒素)

  Cre(クレアチニン)

  尿比重/UPC

  SDMA

シスタチンC

 

3.最後に

ごあいさつ

こんにちは。

オンラインどうぶつ病院Talkvets獣医師の前田です。

今日は血液検査の話をしたいと思います。

春に健康診断で血液検査を受けて、獣医さんから説明を受けた方も多いのではないかと思います。

健診の時に、獣医さんが一番よく説明している数値が腎臓の数値かもしれません。

でも、この腎臓の数値には少し難しいところがあったりします。

今回はそんな腎数値についての話をしたいと思います。

獣医さんが解説する慢性腎不全の数値の秘密

腎臓の数値は判断が難しい

実は腎数値は意外と解釈の難しいものの一つで、獣医さんとしても日々頭を悩まされている数値と言えるかもしれません。

というのは、院内でルーチンで測っているBUN、Creという腎臓の数値は他のいろいろな要素に影響を受けるのに加え、腎臓が悪くてもなかなか正常値をオーバーしないという特性を持っているからです。

つまり、腎数値が正常でも腎機能は低下している可能性があったり、少しオーバーしていても腎臓のせいではないかもしれないのです。

しかも、他に確実に腎機能を反映している検査項目がないので、総合的に判断するために補助的な指標が他の臓器より多いというわけです。

今日は、BUN、Creを含め、その他の補助的な指標として使われているものをご紹介しようと思います。

BUN(尿素窒素)

BUNは、タンパク質を代謝した後の窒素という物質がどれくらい体の中に蓄積しているかを示す値です。

腎臓は体の中のゴミ処理場の役割があり、腎機能が落ちてくるとこの尿素がたまってくることから腎臓の数値として使われています。

実際に、腎不全が進むとBUNは上がってくるのですが、一般的には腎臓の機能の70~80%程度がなくならないと上がってこないとも言われています。

加えて、タンパク質の代謝物を測っているので、高タンパクの食事の摂取でも数値が上がってきたり、循環が悪くても(脱水や心不全)上昇します。

Cre(クレアチニン)

BUNより信頼性をもって使われているのがCreという値です。

この数値は、腎臓で排泄される筋肉から出る老廃物の蓄積量を見る値で、現在使われている腎不全のステージ分類での指標となっています。

ただし、この数値にも判断しづらい点があります。

それは、BUNと同様に腎機能が75%程度低下しないと異常値を示さないと言われていることです。

加えて、筋肉の量によって値が左右されることもわかっており、筋肉量の多い子だと数値が高くでたり、逆に高齢になって筋肉量が落ちてしまうと、実際より低く出るということがあります。

尿比重/UPC

腎機能が低下してきたときに、BUN、Creの値より比較的早く異常が出やすいのが尿比重です。

腎臓がもつおしっこを濃縮するという能力が落ちると尿が薄くなっていくので、尿の濃さを測ることで腎臓の機能を推測することに役立ちます。

ただし、飲水量で尿の濃さがかわってしまうので、他の病気で多飲があったり、医療食の効果で飲水量が増えていると判断に使えないので、やっぱり単独では使える数値ではないです。

また、UPCといっておしっこの中の尿蛋白の値を測る指標も見ることがあります。

これも腎臓の異常を早期にキャッチできることがありますが、腎臓のどの場所が原因で腎不全になっているかによっては上がってこないことがあります。

(一般的に、わんちゃんでは糸球体という濾過機能に関わる部分に異常が出る子が多いのでおしっこに尿蛋白が出てくることが大切な指標になることがあります。)

SDMA

腎機能が70~80%低下しないと上がってこないというBUNやCreの欠点をカバーするために、少し前に脚光を浴びたのがSDMAという数値です。

1つの研究では、腎機能が40%程度低下した段階で上がってくる指標としての可能性が示されており、急速に広がった指標です。

ただ、実際に現場で使っていると変動幅で、正常範囲を超えたりすることがあったり、Creが上昇していて腎不全が疑わる子なのに上がってきていなかったりと、少し使い勝手が悪いところがあるのですが、継続的に測っていくことで、早期に腎機能低下を見つけられる可能性がある数値ではあると思います。

現状では、Creに代わるものというよりは補助的な指標という立ち位置に落ち着いている数値です。

シスタチンC

人でよく使われている腎臓の指標の一つです。

20kg以下の犬の腎臓の補助指標として使われています。

シスタチンCは全身の細胞から産生されるタンパク質の一種で、腎機能の低下で血中濃度が増加することを利用した値です。

筋肉量に関係なく使えるという利点があり、Creより早期に腎機能低下がわかる可能性が期待されています。

最後に

血液検査でそういえばこの数値を説明されたかも?と心当たりがあるものはあったでしょうか?

実際には血液検査に加えて、腎臓のエコーといった画像検査も加えて診断をしていることも多いです。

来年はAIM薬の発売も期待されており、わんちゃん、ねこちゃんの腎臓に注目してもらえたらと思います!

それでは、また次回のコラムでお会いしましょう!

執筆者

2010年 北里大学獣医学部卒業

大阪、東北の動物病院を経て、

2015年~2016年 北里大学附属小動物医療センター研修医

2016年~2024年 大阪市内の動物病院の開業業務にたずさわり、院長として勤務

2024年 オンラインどうぶつ病院Talkvets立ち上げ

当サービスのご利用にあたって

オンライン相談では、

診断をつけたり、

お薬を処方することは

できません。

動物たちのより良い生活や

より良い医療のための

サービスであることを

ご理解ください。

サービスのご案内 service
獣医師紹介 doctor
サービスのご案内 service
獣医師紹介 doctor