獣医さんのコラム(284)獣医さんが解説する獣医さんができれば避けたい手術3選

もくじ

1. ごあいさつ

2.獣医さんが解説する獣医さんができれば避けたい手術3選

  全顎抜歯柴犬

  抜爪術

  両側乳腺全切除術

3.最後に

ごあいさつ

こんにちは。

オンラインどうぶつ病院Talkvets獣医師の前田です。

獣医さんは日々、色々な手術をしているわけなのですが、実はその中でもできれば避けたい手術もあります。

今日はそんな獣医さんの避けたいと思う手術とその理由についてのお話をしたいと思います。

獣医さんが解説する獣医さんができれば避けたい手術3選

全顎抜歯

動物病院でよくある抜歯は、歯根に問題があって抜かざるおえない歯周病の治療のための抜歯です。

ただし、この全顎抜歯は少し違います。

この手術の適応は、猫の重度の歯肉炎です。

猫の歯肉炎は、もちろん歯が問題でも起こるのですが、それ以外にも歯自体ではなく歯や歯周ポケットに住み着いた細菌に免疫が反応することで重大な歯肉炎を起こすことがあります。

この免疫関連の歯肉炎は、ステロイドなどで内科管理をするのですが、薬でコントロールができない場合は歯を抜くことで炎症を鎮めるという治療が行われます。

その治療のための抜歯の手技のひとつが全顎抜歯です。

全顎抜歯は前歯、犬歯、奥歯の全てを抜く手術で、健康な歯を全て抜くので、当然侵襲が強く、かなり大変な手術です。

そのため、獣医さんとしては本当に必要なのかを慎重に判断したい、他にできることがあるならそれを先にして、どうしてもダメなら実施するようにしたい手術とも言えます。

本来の目的が、炎症をコントロールして食欲などを維持することなので、基本的には内科治療でコントロールできるならそちらの治療を優先することはもちろん、抜歯をする場合でも、なるべく侵襲を低くするために奥歯だけを抜く全臼歯抜歯をはじめに行うことが多いです。

抜爪術

抜爪術とはそのままズバリ、爪をとる手術です。

最近は少なくなりましたが、昔は猫が爪を研がせないことを目的によく実施されていました。

確かにこの手術をすると爪とぎ問題は解消されるのですが、爪を指の関節ごと切除する手術なので侵襲がとても強く、「できないですか?」と軽く聞かれることもあるのですが、獣医さん的にはできればやりたくない手術です。

何かというと、しつけである程度は爪とぎをしないようにできるのに、動物さんに痛みを強いて強制的にできなくするということにやっぱり獣医さんとしてはやりたくないという気持ちが強いからです。

同じカテゴリーの手術で、吠えてしまう犬に声帯除去手術も昔はよくされていましたが、同じ理由で最近はなるべく避ける獣医さんが多いです。

両側乳腺全切除術

犬も猫も人間と同様に腫瘍はとても多い病気です。

その中でも、乳腺腫瘍はメスのわんちゃんの腫瘍の半分を占めると言われるほど多い疾患です。

その乳腺腫瘍に対しての手術の手技の一つが両側乳腺切除術です。

乳腺に腫瘍ができた場合、その腫瘍のみをくり抜く手術、その腫瘍のある乳腺を1つだけとる手術、その腫瘍がある乳腺を領域ごとブロックでとる手術、その腫瘍のある側の乳腺を全てをとる手術、乳腺を両側全部とる手術と色々な手術手技を取ります。

一番重要なのは、悪性が疑われるかどうかで、悪性が疑われる場合は少なくとも片側全摘出以上の手術をすることになります。

ただここにちょっと問題があって、乳腺の腫瘍はある日偶然発見して来院するというケースが多く成長速度で悪性か良性かを判断しづらいことと、針を刺して悪性かどうかの診断をするFNAという簡易的な細胞の検査方法では悪性かどうかを判断することが難しいことがあります。

これが、メス猫さんの乳腺腫瘍であれば90〜95%以上が悪性なので、思い切って片側/両側全摘出をできるのですが、わんちゃんの場合は悪性の可能性は30~50%程度と言われているので侵襲の強い手術をすることが結果的にいいのかを慎重に判断する必要があります。

そのため、かなり悪性疑いが強い場合以外は獣医さん的には安易に全摘出、特に両側の全摘出はなるべく避けたいと思っています。

最後に

基本的に、侵襲が強い手術になればなるほど、安易に実施できないというのは共通した考え方です。

でも、治療はなるべく早くしたいということで、2段階に分けて手術を計画するということもよくあります。

手術は人為的に、患者さんに傷をつけるものなのでなるべく必要十分にしたいというところなのです。

それでは、また次回のコラムでお会いしましょう!

執筆者

2010年 北里大学獣医学部卒業

大阪、東北の動物病院を経て、

2015年~2016年 北里大学附属小動物医療センター研修医

2016年~2024年 大阪市内の動物病院の開業業務にたずさわり、院長として勤務

2024年 オンラインどうぶつ病院Talkvets立ち上げ

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