獣医さんのコラム(312)獣医さんが解説するブレイクスルーになった薬3選

もくじ

1. ごあいさつ

2.獣医さんが解説するブレイクスルーになった薬3選

  心臓のブレイクスルー(ピモベンダン)

  痒みのブレイクスルー(オクラシチニブ(アポキル))

  催吐のブレイクスルー(ロピニロール(クレボル))

3.最後に

ごあいさつ

こんにちは。

オンラインどうぶつ病院Talkvets獣医師の前田です。

本日は豆知識シリーズとして『薬』の話をしたいと思います。

テーマは動物医療でブレイクスルーになった薬です。

他のテーマで少しこの話題には触れたことがあるのですが、実はこんなことに困っていて、今はこうなったという話をご紹介したいと思います。

獣医さんが解説するブレイクスルーになった薬3選

心臓のブレイクスルー(ピモベンダン)

今では心臓治療の中心薬になっているのが「ピモベンダン」という薬です。

軽度の心臓病のわんちゃん意外は使っていることが多い薬で、心筋のCa²⁺の感受性を高め心臓の収縮力を増加させるとともに、PDEⅢ(ホスホジエステラーゼ3)を阻害することで血管を拡張し、血を送り出しやすくする効果があります。

この薬のすごいところは2つあります。

一つ目は、心臓の治療の方向性をかえたこと、二つ目は、悪化を防ぐという考え方を持ち込んだことです。

ピモベンダンが出てくるまでは、心臓が悪化して肺水腫を起こしたときに、入院中は注射薬として心臓の収縮力を高めて治療することができましたが、退院後の維持のために使える強心薬はあまり使いやすい薬がなかったため、利尿剤や血管拡張薬などをメインで使っていました。

そのため、なかなか状態の維持が難しく、肺水腫を起こすと予後が本当に悪かったです。

そこに、ピモベンダンという強心作用のある内服薬が発売されたことで、利尿剤で水を抜き、血管を広げることで心臓が血液をおくりだしやすくなるという治療に加え、弱った心臓のポンプとしての力を強化するという治療も自宅でもできるようになったのが本当に画期的なものでした。

その上、ピモベンダンを使うことで僧帽弁閉鎖不全症が進行して肺水腫を発症するまでの期間を延長できることが報告され、今までできなかった発症予防ということにも使用できることがわかったのも画期的でした。

痒みのブレイクスルー(オクラシチニブ(アポキル))

心臓と並んで、治療に難儀していた疾患の一つにアレルギーがあります。

何に困っていたかというと、アレルギーを抑えるためにステロイドというホルモン剤かもしくは免疫抑制剤という選択肢しかなかったことです。

ステロイドはいい薬ではあるのですが、その分、長期で使うと副作用も問題になる薬でした。

副作用があっても、それ以外にあまり選択肢がなかったので、副作用を気にしながら使っているという状態でした。

そんな中で出てきたのがオクラシチニブ(商品名:アポキル)でした。

それまでは、アレルギーを起こす原因になっている免疫細胞を抑えたり炎症を抑えたりという考え方が中心でしたが、オクラシチニブ(商品名:アポキル)は痒みを伝える回路をブロックするという新しい考え方の薬でした。

アレルギーは皮膚が赤くなって痒くなるというイメージがあるかもしれませんが、実際にはアレルギー⇨痒い⇨掻く⇨皮膚が赤くなる⇨さらに痒くなるという悪循環で起こっており、痒みの回路を抑えるというのは画期的な考え方でした。

加えて、副作用が少なく比較的安全に使える薬というのもまさに待ち望んでいたと言えるかもしれません。


催吐のブレイクスルー(ロピニロール(クレボル))

わんちゃんは誤食の多い動物さんです。

なので、誤食したものを吐かせるという処置をすることもよくあります。

ただし、この吐かせるというのが問題で、昔は過酸化水素(オキシドール)を飲ませて胃粘膜を刺激して催吐させていましたが、胃の粘膜を薬で荒らす処置方法だったため、最近では、トランサミンという止血剤の一種を血管に急速投与することで吐き気を誘発させるという催吐処置が一般的になっていました。

このトランサミンの投与もかなりの割合で催吐が可能で、胃を荒らさないので過酸化水素(オキシドール)に比べるとかなり体に優しく催吐処置ができるのですが、血管に管を入れないと処置ができなかったので処置を嫌がる子は薬を投与するまでが大変という欠点がありました。

そんな中で出てきたのが、このロピニロール(商品名:クレボル)です。

この薬はなんと点眼するだけでほぼ90%以上の犬で嘔吐させることができる薬です。

早く吐かせたいのに、なかなか血管に管を入れられず薬の投与まで辿り付かない…というジレンマを解決できるのが、獣医さん的にも、催吐処置を受けるわんちゃんにとっても本当に画期的な薬と言えると思います。

最後に

今日は何気に処方されている薬にも実はこんな経緯があって…という話をしてみました。

ちょっと小難しいかもしれませんが、少しでもへぇーっと思ってもらえたら嬉しいです。

それでは、また次回のコラムでお会いしましょう!

執筆者

2010年 北里大学獣医学部卒業

大阪、東北の動物病院を経て、

2015年~2016年 北里大学附属小動物医療センター研修医

2016年~2024年 大阪市内の動物病院の開業業務にたずさわり、院長として勤務

2024年 オンラインどうぶつ病院Talkvets立ち上げ

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