獣医さんのコラム(130)獣医さんが解説するわんにゃんのホルモンの病気〜副腎編〜

もくじ

1. ごあいさつ

2.獣医さんが解説するわんにゃんのホルモンの病気〜副腎編〜

  クッシング症候群(副腎皮質ホルモン亢進症)

  アジソン病(副腎皮質機能低下症)

 

 

3.最後に

ごあいさつ

こんにちは。

オンラインどうぶつ病院Talkvets獣医師の前田です。

先週、今週とライフステージの話を書いていて、持病になりやすいものを考える機会があったので、今回は持病の中でも多いホルモンの病気について書いてみたいと思います。

そして、書いているうちに長くなってしまったので2つに分けておおくりしたいと思います。

今日は前編の副腎編です。

今日は主にわんちゃんの病気です!

獣医さんが解説するわんにゃんのホルモンの病気〜副腎編〜

クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)

わんちゃんで最も多いホルモンの病気といったら、クッシング症候群(クッシング症候群)といっても過言ではないと思います。

高齢のわんちゃんでとても多い病気です。

・副腎って何?

腎臓の近くにある小さな臓器で、ホルモンなどをつくっています。

左側はピーナツ型、右側はコンマ型をしていて超音波検査で観察できます。

・クッシング症候群では副腎はどうなる?

基本的にはクッシング症候群だと副腎は大きくなります。

・2つの病気のパターンがある

1つ目は、下垂体性クッシング症候群

頭の中の下垂体という部分からの『ホルモンをつくれ』という指令がたくさん出ることで副腎が両側ともに大きくなるパターンで、全体の9割以上を占めています。

2つ目は、副腎性クッシング症候群

副腎自体が腫瘍化して大きくなるパターンです。

片方の副腎が大きくなってホルモンをだしすぎるので、もう片方が縮みます。

どちらのタイプも、副腎が大きくなりステロイドホルモンがたくさん作られることで症状を出します。

・クッシング症候群ではどんな症状がでる?

ステロイドという薬を内服した時と同じような症状が出ます。

わかりやすいのは、多飲多尿という症状です。

その他にも、筋肉が痩せてくることでお腹が出てきたり、毛が抜けてきたり、皮膚が黒ずんできたりという症状がでます。

・どんな治療をするの?

下垂体性クッシングは体に中でつくられるステロイドホルモンの量を抑える薬(トリロスタン)でコントロールすることが多く、副腎性クッシングの場合は手術が第一選択になることが多いです。

・この病気になったらその後はどうなるの?

海外の研究では、クッシング症候群になりトリロスタンで治療したわんちゃんの中央生存期間は521日、無治療だと178日となっています。(ただし、無治療の群は数が少なかったために有意差として研究上は認められなかったようです)

Survival analysis of 219 dogs with hyperadrenocorticism attendingprimary care practice in England

Schofield et al,Vet Rec. 2019 Sep 20;186(11):348.

実際に治療をしている印象ではクッシング症候群を治療しているほとんどのわんちゃんはもう少し長生きしていることが多いように思います。

逆に無治療のわんちゃんも、診断を受けるまでに長くかかっていることが多いので、178日というのは短すぎる印象ではあります。

アジソン病(副腎皮質機能低下症)

今度はクッシング症候群の反対のような病気を紹介します。

犬のアジソン病では、副腎が萎縮することで副腎からでるホルモンが足りなくなる病気です。

クッシング症候群は高齢のわんちゃんの病気ですが、アジソン病は若いわんちゃん(~中年のわんちゃん)の病気です。

・アジソン病では副腎はどうなるの?

副腎は萎縮してしまいホルモンが出なくなります。

・何歳ぐらいで起こるの?

平均4.5歳と言われています。

2ヶ月齢で発症した例や平均よりかなり高い9歳ぐらいで発症する場合も報告があります。

診察している印象だと平均年齢くらいか、もう少し若いわんちゃんで多い印象です。

・性別の差がある?

女の子で多く、76%という報告があります。

・この病気も2つのパターンがあります

1つ目が、定型型アジソンと呼ばれていてミネラルコルチコイドとグルココルチコイドの両方が欠乏するパターンです。

このタイプは、食欲不振、脱水、嘔吐、下痢など症状がきつく、ぐったりして運ばれてくることもしばしばあります。

2つ目が、非定型型アジソンと呼ばれていて、グルココルチコイドが欠乏しているパターンです。

全体の10%~がこのパターンで、1つ目のパターンに比べると症状がマイルドです。

ストレスがかかると下痢や嘔吐などの消化器症状がでます。

症状はマイルドですが、アジソン病の特徴が出にくく診断しにくいのが特徴です。

・治療は?

定型型の場合は、酢酸フルドロコルチゾンというミネラルコルチコイドとグルココルチコイドの両方の効果がある薬を使ってホルモンを補う治療をします。

非定型型の場合はステロイドを使うことが多いです。

・気をつけることは?

ステロイドホルモンが出ないということはストレスに対しての耐性が低下するということにもつながります。

アジソン病の子は、トリミングやホテルなどストレスがかかるイベントには十分注意が必要です。

場合によって、その時だけ薬を増やすなどの対策も必要です。

最後に

アジソン病は比較的レアな病気ですが、意外と隠れて病気の子がいるなという印象があります。

一方で、クッシング症候群はかなり多いです。

最近、お水をよく飲むなと思ったらチェックしてほしい病気の一つです。

明日は、甲状腺編をおおくりしたいと思います。

それでは、また次回のコラムでお会いしましょう!

執筆者

2010年 北里大学獣医学部卒業

大阪、東北の動物病院を経て、

2015年~2016年 北里大学附属小動物医療センター研修医

2016年~2024年 大阪市内の動物病院の開業業務にたずさわり、院長として勤務

2024年 オンラインどうぶつ病院Talkvets立ち上げ

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