
もくじ
1. ごあいさつ
3.最後に
ごあいさつ

こんにちは。
オンラインどうぶつ病院Talkvets獣医師の前田です。
皆さんは療法食を使っていますか?
獣医師に勧められて使っていたり、ネットで調べて取り寄せていたりとさまざまだと思いますが、今回はそもそも療法食って何?というところから、それぞれの効果をまとめてみたいと思います。
獣医さんが解説する療法食の効果って?パート1

療法食とは?
そもそも療法食って何?と言われると、療法食は一般の食事と違い、身体の健やかな維持のためのフードではななく病気のためのフードです。
つまり、特定の疾患に対して、栄養組成を調整することで病態の改善や悪化防止、再発予防などさまざまな医療的な役割を付与した、治療の一部としての食事のことを療法食と呼びます。
ここで注意したいのが、身体の健やかな維持を目的としているわけではないので、その組成が全ての子にとって良いわけではなく、状態によっては害ともなり得るということです。
そのため、療法食は獣医師の指導下での使用という制限がかけられています。
今回は、獣医師の指導が必要なポイントも含め代表的な療法食の効能についてを解説してみたいと思います。
代表的な療法食①尿石用
使っている人が多い療法食の1、2を争うのがこの尿石用の療法食です。
わんちゃん、ねこちゃんの尿石症はストラバイト(リン酸マグネシウムアンモニウム)結石とシュウ酸カルシウム結石の2つが大部分を占めます。
ストラバイトは尿がアルカリ性に傾くと析出し、酸性に傾くと溶解する性質があります。
一方で、シュウ酸カルシウムは、酸性への傾きが強いと析出が増え、析出してしまうと溶けない結石です。
そのため、用途としては、ストラバイト結晶や結石を溶解する目的で尿石用療法食を使う場合もありますし、シュウ酸カルシウム結石を除去後の再発防止のために使うこともあり、さまざまです。
ただし、一般的に尿石を析出しないためのメソッドは共通で以下の3つの考え方で作られていることが多いです。
①尿中の結石の成分を減らす
ストラバイトではリン酸やマグネシウム、シュウ酸カルシウムではシュウ酸やカルシウムが尿中に排出される量を減らし、結石成分の結晶化を防ぐという設計になっています。
②尿のp H値をコントロール
ストラバイトが形成されず、シュウ酸カルシウムの形成が増えない弱酸性を尿のコントロールの目安として調整されています。
③尿を薄める
尿を薄めることで、尿中の成分を希釈し析出しにくくするという設計が取り入れられていることがあります。
この中で、獣医師の指導が特に必要な部分は、そのごはんで本当にシュウ酸カルシウムの再発が防げているかと、尿量を増やす設計が他の臓器の負担になっていないかという点です。
シュウ酸カルシウムは療法食を食べていたら安心という結石ではなく、療法食を食べていてもかなり再発率の高い結石のため、コントロールできているかをチェックしてもらう必要があります。
また、尿量を増やす設計になっているフードは塩分などが添加されている場合があり、腎臓、心臓など他の臓器の機能低下がある場合は負担をかけてしまうことがあります。
そのため、他の疾患のモニターをしつつ使用していく必要があります。
代表的な療法食②消化器用
消化器用のごはんは、消化管が処理しやすく、腸内細菌や腸内環境の安定化させることを目標としています。
そのために、消化器用のフードでは以下のような効果を付与させていることが多いです。
①高消化性
例えば、タンパク質は小腸で十分に消化吸収できずに大腸まで大量に流れてしまうと、細菌がタンパク質発酵を起こし、腸にとって好ましくない、アンモニア、インドール、フェノール類、硫黄化合物といった代謝物が増えてしまいます。
そのため、消化器用フードでは高消化性タンパクを使用し大腸まで残るタンパク質量を調整されています。
②低脂肪
脂肪もまた、消化に手間のかかる栄養素の一つです。
基本的に小腸で処理されるのですが、処理能力を超えてしまうと小腸にも負荷がかかることはもちろん、大腸まで流れてしまうことで、軟便、下痢、脂肪便につながる可能性があります。
ただし、脂肪はカロリー密度が高い栄養素なのでただ減らすだけではなく、その他の栄養素で補う設計になっています。
③繊維量の調整
食物繊維の量も消化器食のポイントの一つです。
食物繊維は腸内細菌によって発酵し、短鎖脂肪酸を作り、大腸の細胞のエネルギー源となる重要なものであり、発酵性が少ない繊維も便の水分の調整や腸の運動を刺激する役割があります。
④プレバイオティクス
さらに消化器食には、FOS(フラクトオリゴ糖)イヌリン、MOSなどのプレバイオティクスとよばれる活性化してほしい特定の腸内細菌の餌となるような成分を添加し、善玉菌が活性化しやすい腸内環境を整えています。
消化器用食は比較的、害を与えづらいフードではありますが、それでも獣医師にチェックしてもらうべきポイントがあります。
それは、小腸に注力したいか大腸に注力したいかで、必要な成分が違うということです。
例えば軟便という症状でも、大腸性なのか小腸性なのかで消化器食の種類がかわってくるのです。
そのため、獣医師に身体の状態を判断してもらい適切なフードを選ぶ必要があります。
代表的療法食③慢性腎不全用
慢性腎不全のわんちゃんやねこちゃんでも療法食は非常に重要な治療ツールの一つです。
なぜなら、腎臓は身体の中でゴミ捨て場の役割をになっており、腎臓の機能が低下することで代謝物が排出されにくくなったり、必要な成分が排出しすぎてしまったりと色々な障害が出てくるからです。
療法食の役割は、腎臓の機能のさらなる低下を防ぐため腎臓の負荷をなるべく軽くすることと言えると思います。
具体的な療法食の作用としては、
①リンを減らすこと
腎臓の機能が低下すると、尿中にリンを排出する能力が下がり、血中のリン濃度が上がってきます。
そしてこのリンの上昇が、腎臓病の進行に関連していることがわかっています。
そのため、腎臓用の療法食では食事中のリンを制限することで血中のリン濃度をコントロールしやすくしています。
②タンパク質の制限
タンパク質は、とても大切な栄養素のひとつですが、代謝されて最終的には尿素などの窒素代謝物となります。
この窒素代謝物は、腎臓からしっかり排出しないと尿毒症といって身体を害してしまうという性質を持っています。
そのため、療法食では窒素代謝物の排出を最小限にして、腎臓に負荷をかけづらくし、尿毒症を防ぐという意味合いでタンパク質を制限しています。
③電解質や脂肪酸など
さらに、電解質のバランスを調整し、腎不全による血圧の上昇を抑えたり、脂肪酸を加えることで糸球体炎といった炎症が軽減するようにサポートする効果も付与されていることがあります。
腎臓食も特殊な身体の状況に合わせたごはんです。
そのため、いつ始めるかが重要です。
早くはじめすぎる、つまり早くタンパク質を制限しすぎると逆に筋肉量などを落としてしまう結果になり、健康維持に問題が出てきます。
獣医さんはこのいつ始めるかを、その子の病態の経過を考慮して決めているのと、腎臓関連の数値が上がっていることがイコール腎不全というわけではないので、本当に必要かを判断して開始を判断しています。
最後に
今回はパート1として、使っている方の多い療法食を取り上げてみました。
パート2では、皮膚を含め他のちょっと特殊な療法食についての話もしたいと思っておりますので、ぜひそちらも読んでいただけたらと思います!
それでは、また次回のコラムでお会いしましょう!

執筆者
2010年 北里大学獣医学部卒業
大阪、東北の動物病院を経て、
2015年~2016年 北里大学附属小動物医療センター研修医
2016年~2024年 大阪市内の動物病院の開業業務にたずさわり、院長として勤務
2024年 オンラインどうぶつ病院Talkvets立ち上げ