
もくじ
1. ごあいさつ
3.最後に
ごあいさつ

こんにちは。
オンラインどうぶつ病院Talkvets獣医師の前田です。
今日が療法食シリーズ最後の回をおおくりしたいと思います。
獣医さんは基本的に動物病院専売の療法食を使っていることが多いですが、今回はその中でも、少しマイナーな療法食の話や、以前はあったのに廃盤になってしまった療法食の話も取り上げておこうと思います。
宜しければお付き合いいただけたらと思います。
獣医さんが解説する療法食の効果って?パート3

代表的な療法食⑦関節/ダイエット用
関節症に対応したフードとダイエット用フードは全く別物ではあるのですが、目的は共通していることも多いのでここでは一緒に紹介したいと思います。
医療的なダイエットのほとんどは、実は関節や整形疾患による症状を軽減させるために始めることが多かったりします。
もちろん、特に病気がなくてもダイエットを始めることはありますが、何も症状がないダイエットはなかなか始めるのに大きなステップがあるので、ダイエット食を始めるきっかけはやはり痛みなどの症状からという場合が多く、実際に10%でも体重を減量することがどんなフードやサプリメントよりも効果を発揮するため、ダイエットは本当に重要な治療法でもあります。
目的はともかくとして、2つは少し違う種類のごはんなので、まずは関節用から始めたいと思います。
関節用の主な効果としては、
①炎症を抑える
他のフードでも登場したオメガ脂肪酸がここでも活躍しています。
特に、EPAという成分は滑膜炎などの炎症を調整することで関節症の症状の改善が期待できる成分です。
②グルコサミン、コンドロイチン
グルコサミンやコンドロイチンも関節用のフードの成分として用いられていることが多いです。
これら2つは関節の中の軟骨に関連した成分でもあるため、直接的に働くわけではないものの修復のサポートという面で配合されていることが多いです。
③体重管理、筋肉量維持
関節症による慢性疼痛は運動量の低下に大きく寄与しています。
そして、運動量が低下することで体重が増え、症状を悪化させるという悪循環も生みます。
そのため、関節用のフードの中にもダイエットと筋肉量の維持の効果を持たせたものが数多くあります。
一方で、ダイエット用のフードは
①低カロリーだが必要な栄養素を摂れる
通常のフードでダイエットしようとすると、食事量を減らすという形になると思います。
これはカロリー的には正解ですが、必要な栄養素も不足するという結果になってしまいます。
その点、ダイエットフードはカロリーを減らしつつ必要な栄養素をしっかり摂り、身体の筋肉を減らさないような配合になっています。
②食物繊維の配合
ダイエットは食欲との戦いとよく言われますが、それは動物も一緒です。
ダイエット食では、食物繊維を配合し満腹感を維持しやすいなってることが多く、空腹感を軽減できるよう設計されています。
③L-カルニチンなどの成分
ダイエットフードにはものによって、脂肪の燃焼を助けるような成分が入っていることもあります。
代表的な療法食⑧てんかん/認知症用
わんちゃんはてんかん発作がとても多い動物種です。
また、昨今、わんちゃんも高齢化に伴って痴呆症状に悩まされるということも増えています。
そこで、マイナーな食事にはなりますが頭関連に対応したフードも発売されています。
その一つがピュリナプロ(病院専売ライン)のニューロケアというフードです。
このフードは、てんかんに対しては脳の興奮しやすさを抑える設計、認知機能不全に対しては脳のエネルギー不足、酸化ストレス、神経細胞の機能低下をサポートするという設計になっており、薬と併用してより良い状態を維持するために使われるごはんです。
特徴的なのは、
①MCT(中鎖脂肪酸)の配合
通常、脳はブドウ糖をエネルギー源として活動していますが、このMCTは少し特殊で、代謝されることによってケトン体として脳の代替栄養源となることができます。
このケトン体を利用することで、神経細胞のエネルギー代謝や神経伝達物質の代謝、ミトコンドリア機能に変化を起こし、神経細胞が過剰興奮しにくい状態になると考えられています。
ちなみに、高齢犬の脳でもブドウ糖代謝が低下することがわかっており、ケトン体を利用することで認知行動の変化も記録されています。
②抗酸化物質
脳は酸素消費量が多い臓器です。
その分、活性酸素が発生し酸化ストレスにさらされていると考えられており、さらに神経細胞は再生能も弱いため、酸化ストレスの軽減のための抗酸化物質が配合されています。
③抗炎症物質
他のフード同様に、脳にもオメガ3脂肪酸は重要です。
特に、DHAは神経細胞膜の構成脂肪酸でもあり重要視されています。
代表的な療法食⑨腫瘍用
さらに、今は廃盤となっていますが、かつても病院専売食にも腫瘍の子用のごはん(n/dなど)が発売されていました。
現状では、病院食として代替品があるわけではないのですが、ネット販売の獣医師監修フードなどで腫瘍の子に向けたごはんがあるので、ここでも取り上げておこうと思います。
腫瘍はブドウ糖、つまり糖質=炭水化物を大量に消費して成長しています。
そしてそのブドウ糖を使用した後に、代謝物として乳酸を大量につくり、それを宿主が大量のエネルギーを使って処理するという悪循環が生まれます。
そのため、腫瘍用のフードの主な考え方は低炭水化物です。
その分、高脂肪にすることでカロリー摂取を補い、さらに高タンパクにすることでがん性悪液質からの筋肉量の低下を軽減する設計になっていることが多いです。
そしてさらに、魚油(オメガ3脂肪酸)+アルギニンをリンパ腫の治療中に併用することで、一部、無病期間や生存期間の延長したという報告もあることから、オメガ3脂肪酸やアルギニンなどの成分が配合されている場合もあります。
最後に
お使いのフードはこの中にあったでしょうか?
実際に、治療している身からすると、療法食は重要な治療の柱です。
そして、近年さらに重要性を増しているツールでもあります。
ちょっと高いかもしれませんが、ぜひ適正な管理のもと使ってみてもらえたらと思います。
それでは、また次回のコラムでお会いしましょう!

執筆者
2010年 北里大学獣医学部卒業
大阪、東北の動物病院を経て、
2015年~2016年 北里大学附属小動物医療センター研修医
2016年~2024年 大阪市内の動物病院の開業業務にたずさわり、院長として勤務
2024年 オンラインどうぶつ病院Talkvets立ち上げ